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フロイトの理論


フロイトはオーストリア出身の精神分析学者ですが、最初は催眠でヒステリーの患者を治療していました。しかし、後には催眠に疑問を感じ、自由連想法を採用して、精神分析という方法を確立したのです。
「彼の偉大な功績は、【無意識】を発見したこと」、と言われるように、フロイトは心の構造を2つの視点から考えました。
1つは、意識、前意識、無意識、という構造です。

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まずは最初の観点について考えてみましょう。
意識というのは、心の中の『自分で気が付いている部分』です。
そして前意識というのは、『今は気付いていないが、気付こうと思ったり何らかのきっかけが有ったりしたら、気が付く部分』であり、無意識というのは『気付けない部分』となります。
フロイトは、この構造を氷山に喩えました。
つまり、水面上に見える部分を『意識』、水面のあたりを『前意識』、水面下のとっても大きい部分を『無意識』であると考え、この巨大な無意識の部分が大きな役割を担っていると考えたのです。


さて、彼が考えたもう1つの観点としては、エス(イド)・自我・超自我という心の構造です。

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彼は、人の心の奥深くにある、この『無意識』の領域が、人の考えや行動に影響していることを突き止め、この無意識的動機は本来、性的動機(リビドー)であると考えました。

エスというのは、この無意識的動機の貯蔵庫であり、「~したい」「~欲しい」などという『快楽原理』によって発動させる基地と考えられます。
しかし、この快楽原理で「何でも有り」となると、社会が成り立たなくなる為、自我が『現実原則』によってエスをコントロールし、さらにその上位には「~するな」とか「~するべきだ」という超自我が『良心(道徳)』としてエスを抑えていると考えたのです。

これによると、自我はエスと超自我の交通整理をしていると言えますね。まとめ役と言ってもいいでしょう。

さて、世界的な哲学者・心理学者であるフロイトなのに、日本ではあまり人気が無いようですが、これには東洋と西洋の宗教や歴史の違いが大きいと思われます。
簡単に言うと、西洋では、「自分の事は自分が全てわかっている」つもりだったんですね。

ところが日本はベースに仏教が有り、その仏教は大昔から【無意識】を認めているのです。
仏教では古くから『意識下にあるモノ』について考えられてきました。
認知としての『(仏教で考える)意識』の下に『末那識(煩悩の貯蔵庫)』が、そして、その下に『阿頼耶識』が存在すると考えたのです。

ちなみに、この『阿頼耶識』というのは、上座部(小乗)仏教では、フロイトの考えたエスに似ている部分があり、大乗唯識では後で述べる、ユングの考えた『普遍的無意識』と共通する、遺伝の歴史や根源を含んだものと考えられていました。
これらの考え方が影響しているのか、フロイトの『無意識の発見』という業績に対し、「自分の心の中に、自分が知らなかったりコントロールできない領域が有るなんて!」と驚愕した西洋人に比べ、あまりびっくりしなかったのかもしれませんね。

フロイトは、ヒステリーの患者に対し、始めは催眠療法を用いていました。
しかし、患者の中には催眠に陥らない人もいるし、無意識レベルの深さまで到達しない人も多く、彼は催眠療法に限界を感じ、『前額法』へと治療法を変えました。
これは、患者をベッドに寝かせて額を手で押しながら質問をする方法です。ところが或る日、患者がフロイトにこう言ったのです。
「先生の質問によって考えの流れが途絶えてしまいます」

質問しているつもりが、実は患者の話の腰を折っているのだ、と気付いたフロイトは、それ以降は患者に『心に浮かぶことを、そのまま自由に語ってもらう』ように方針を転換しました。これが、有名な【自由連想法】です。
ここから『精神分析』の歴史が始まりました。


エディプスコンプレックス


フロイトは、自分の心を見つめているうちに、人は幼児期に異性の親を愛し、同棲の親と張り合うのではないかと考えました。
この心理を、『父とは知らないで父親を殺し、母とは知らないで母親と結婚してしまったギリシャ神話の王子』の名にちなんで『エディプス感情』と名づけました。
これがコンプレックスとなったのが、かの有名なエディプス・コンプレックスです。

この、子供の頃に生じたエディプス・コンプレックスは、一旦は薄れていくのですが、思春期にまた表れると言われています。父と対立したり張り合ったりする息子や、母ととげとげしくなってしまう娘などが良い例ですね。
この対立を乗り越えられると、親への理解が深まります。


防衛機制



さて、次は防衛機制についてです。
防衛機制とは、心がピンチになった時に、心が壊れたりするのを無意識の内に防ぐ防御システムと考えてもいいでしょう。

例を挙げてみましょう。
(なお、本来は無意識のうちに進むのですが、例ではわかりやすくする為に『言葉』にしてあります)


合理化

これは『酸っぱいブドウ』として有名です。イソップ寓話で、キツネが手が届かなくて取れないブドウを、「あんなもの酸っぱいに決まってる。」と、負け惜しみを言ったことから来ているのですが、要は自分の心の帳尻合わせですね。

「おおっ カワイイっ! ねぇねえっ ちょっと食事でもどう?」
「ぜ~~ったいイヤッ!!!  」
「ちぇっ カワイイけど、きっと性格が悪いんだな。断られてかえってよかったかも…」

カウンセリングの場面では、例えば交流分析で言うところの【禁止令】を言われた子供が、その言葉を合理化してしまう場合が見かけられます。

例を挙げますね。
父親に『お前は鬱陶しいヤツだなぁ』とか『目障りだ』とか言われた女の子は、これらの言葉が禁止令の『存在するな』に当たる為、この言葉をそのまま受け入れるには非常に抵抗があります。
従って、この子供はこれらの言葉を『これはこれで父親の愛情表現だ』と合理化してしまう場合があるのです。
すると、この女の子は大きくなってから、『お前は鬱陶しいヤツだなぁ』とか『目障りだ』とか言う男性に好意を抱いてしまう場合があるんですね。
ただ、これは無意識のうちに【合理化】されてしまったものなので、友人から「どうしてあんなひどい事を言う男とばかり付き合うの?」と言われても、本人は理由に気付きません。


抑圧

記憶から消し去ろうとする事です。

「もう 電話かけてきたりメールするのヤメてね」
「ええっ どうして?」
「好きな人が出来たから」
「ぼ ぼくって好きな人じゃなかったの?」
「え~~っ? あなたは、只の『と・も・だ・ち』」
「・・・これは悪い夢だ。忘れよう。無かったことにしよう」

この例では、意識的に忘れようとしていますが、実際の場合は『無意識のうちに』忘れようと抑圧してしまいます。


投影

彼女のことをとっても好きだと、彼女がちょっと微笑んだだけでも、自分に好意を持ってる・・・とか思ってしまう場合等。
逆に、自分が気にしている自分の欠点などを、相手の中に見てしまう事も有ります。

「彼女ってとってもお金に細かいんだよな~。この前食事に行った時なんかワリカンはいいんだけど、3円とかまで取るんだぜ。
まったく、それくらいオマエが払えっつ~のっ」
「…おいおい 」


同一視

自分以外の人が持っている優れたモノを、まるで自分のモノのように感じたりする事です。
ちょっと古い話ですけど、カッコいいサッカー選手がヘアースタイルをモヒカンにしましたよね。真似をした人も多かったとか…。
あと、アムラーも流行りましたね。


補償

劣等感などを他の事で努力したりして補います。

「ねえねえ 串カツでも食べに行かない?」
「今日は懐石料理に誘われているから、ごめんね(← 一応謝っている言語だが、かなり上の方角から聞こえてくる)」


「くっそぉ~! 見てろよっ! オレだって一生懸命勉強して、金を稼いで懐石だろうがマキシム・ド・パリだろうが、きっと…」

と勉強を頑張ろうとします。
ただ、動機が動機なので挫折することも多いんですね。

唇を噛み締めて勉強しようとしたら、なんと他のカワイイ女性が、
「ねぇねぇ、手羽先食べに行かない?」
「行く行くっ! 」

ま、そんなもんです。誰でも…。 


昇華

何かで凹んだ場合、他の高次な次元に進んで発散しようとします。

「ごめんなさい、私って高学歴の人としか付き合わないことにしてるの」
「うわ~! またふられた もうオレにはギターしかないっ!」
…と、音楽を徹底して練習していたら、有名なギタリストになっちゃうとかですね。

但し悔しかったことをバネにして成功した、というのは成功した人の言う言葉です。
失敗した人には、人は聞きもしませんし、本人も話したくないので『悔しさをバネにしたから成功する』と決まったワケではありません。
でも、それにこしたことがない、というのは確かですが。


【反動形成】

抑圧した感情と正反対の事をしてしまいます。
フロイトは強迫神経症に特異なものとして書いています。
無意識下で憎悪などの衝動が抑圧されている場合に、あたかも親愛の情を持つように振る舞う場合が典型的な例です。


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