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中高年のコミュニケーション パターン

人の悩みの中で、一番多いのは人間関係についてです。

人間関係が上手くいかないと憂鬱になったり不安になるし、かといって人間関係が希薄だと孤独で悩んだりします。
その結果、ひどい場合だとうつ病になったりするわけですが、この『うつ病』に罹る人が年々増えているんですね。

厚生労働省の調査では、平成8年では60.3万人だったのが、26年にはなんと112.2万人と倍近くになっています。
しかも、その半分以上(58.5万人)を65歳以上が占めているのです。

もちろん老人性のうつ病という、年齢が原因だと言われているものもありますが、その老人性のうつ病も、良好な人間関係を持っている人はかかりにくくなるとも言われています。

そうやって考えると、中高年のコミュニケーションって本当に大事だということがわかりますよね。


さて、学生時代は本音を語れる友人が何人もいたのに、卒業して仕事に就くようになってからは段々と心を開くことが出来る人が減っていったという経験がある人は少なくありません。
利害関係が絡むと、どうしても本音の付き合いはしにくくなってしまいます。

そして、社会や組織という大きなものに浸かれば浸かるほど、本音を隠していろいろな言葉を使って自分の思いを表していくようになります。

でも、それが続くと、本人も何を思っているのかがわからなくなってしまうこともあるんですよね。
自分でも気付かないまま、上っ面のコミュニケーションばかりになってしまっているということです。

例えば、仕事でグループのリーダーとなったとします。
そんな場合は、リーダーとして上手くやっていかなければならないので、メンバーを飲みに誘ったりしてコミュニケーションを取るけど、グループが変わったら飲みにいかない…。

この場合の飲みに行く相手は、自分の都合のために誘っているということになります。

こういうパターンを『道具的人間関係』と言うのですが、この道具的人間関係が年齢とともに増えていく場合が多いんですね。

この関係は、深く関わり合わない為、或る意味安全です。
だから、人は傷付きたくない為に、この関係になって行きやすいとも言えます。

ただ問題は、この関係は『自分の都合のために誘っている』わけですから、当然のことながら相手も『自分の都合のためにしか誘ってくれない』わけです。

…となると、こんな関係ばかりになってしまうと、人は自分の『存在意義』について不安になってしまうんですね。

だから、ついつい「オレが、オレが」とか「わたしが、わたしが」となってしまい、却って鬱陶しがられたりしてしまうんです。
悪循環ですね。




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中高年の上手なコミュニケーション 【聴く】

では、どうすれば上手なコミュニケーションがとれて、親しい人、こころを開くことが出来る友人を増やせるようになるのでしょうか。

まずは、【聴く】ことです。

『聞く』という漢字ではなく『聴く』と書きましたが、それについては少し後でお話するとして、『聞く』ということの大事さについての例えで、『話す口は1つしかないが、聞く耳は2つある。だから聞くという事は話す事の倍、大事なのだ』という話があります。

さて、人と人との『思い』の伝達手段としては、
1 耳や口(音声)によるもの、つまり『話す』と『聞く』
2 目や手によるもの、『書く』と『読む』
が主なものとなります。

この中では『書く』ということが一番難しそうに思えますが、本当に一番難しいのは『聞く』ということなんですね。
なぜなら、『聞く』内容は、自分の思うとおりには簡単にはできないから…。

『書く』も『読む』も『話す』も、内容・時・場所を自分で選択する自由度が、『聞く』ということに比べて格段に高い行為です。
それに引き換え『聞く』という行為は自由度が低い為、自分の心をコントロールできる人でないとうまくできません。

例えば、『聞きたくない話』を、『聞きたくない時』に、『聞きたくない場所』で聞かされた、という場面を想像すれば、いかに聞くことが難しいかがわかりますよね。
このことは、『話す』『書く』『読む』についてのノウハウ本は沢山出ているのに、『聞く』技術の本はあまり見かけないということにも表れています(もっとも最近はコーチングやカウンセリングのブームのせいか、増えてきていますが)。

つまり『聞く』ということは、小手先のノウハウや技術ではなかなか対応できない、心のレベルアップが必要な大変な行為という事です。

よく、口喧嘩したときなどに「お互い言い出せばきりが無いから」っていう言葉をつかいます。
これは裏返して言うと、「聞きたくない」という意味ですよね。
「だから、言うのをお互い自粛しよう」ということになるわけです。


さて、その難しい『聞く』ことよりもさらに難しいのが『聴く』なんですね。

これは一言で言うと、『相手の言っていることを理解しようと一生懸命聞く』ことです。

自分の立場で、自分の都合で聞くのではなく、相手の立場や考え方を理解しようとして聞くわけですね。

だから、話を聴くという事はとても難しい事です。
我々はついつい自分の意見や考えを挟み込みたくなります。
ましてや相手が年下だと、特にそうです。

でも、上手なコミュニケーションがとりたかったら、それをせずにとにかく相手の話を聴きましょう。

そして、その時に大切なのはタイミングのよい『あいづち』や『頷き』を、話の中に入れることです。
これは練習が必要ですが…。
でも、これがいかに大事かということは、やってみるとすぐにわかるはずです。
話がすぐにとぎれてしまうという人は、このあいづちや頷きが無いからなんですね。
まずはどれだけの時間、話を聴き続けていられるか、そして相手が楽しく自分に話し続けられるか、目標を設けて時間を計ることをやってみるといいでしょうね。
ず~っと相手が話し続けて、『え~っ、もうこんな時間!』と驚くようになったら、その時は間違いなく上手くコミュニケーションがとれている時ですから。



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『白黒思考』と『べき思考』はダメ

もう一つ大事なことがあります。

中高年の人が上手く人間関係を持てないケースでは、その人に『白黒思考』と『べき思考』が見られることが多いんですね。

『白黒思考』は『完全主義』という形でも見られますが、物事をオール・オア・ナッシングで考えてしまう思考の枠組みです。
一つや二つのミスとか欠点が見つかっただけで、『もうダメだ。ぶち壊しだ』とか思ってしまう人なんかがそうですね。

つまりオール・オア・ナッシングというのは、すぐに白か黒か、正しいか間違いか、敵か味方かとなっちゃうんですね。

ところで、完全主義というとカッコいいのですが、実はこれは【不安の裏返し】とも言えるんです。
また、言い方を変えると、『許せない』んですよね。

何でもかんでも『許せない』んじゃ、そりゃ心も疲れます。
もし、このパターンに陥っていたら、「それもそうだね」とか「まぁ、いいか」という言葉を意識して使うようにしましょう。


そして、その『白黒思考』とペアを組むことも多いのがこれ。
『べき思考』です。

これがコミュニケーションにとって、大きなネックとなる場合が多いんですね。
『~であるべき』『~しなくてはならない』『~であって当然』『そんな事は常識でしょ』…。
これらすべてが、『べき思考』から発生します。

・子供は大人の言うことを聞くべきである。

・先生は人格者であるべきである。

・躾(しつけ)は学校ではなく親がするべきである。

・母親が子供の教育をするべきである。

・父親は立派であるべきである。

・妻は家事をきちっとやるべきである。

・夫は優しくあるべきである。


…こんな感じの『べき思考』からコミュニケーション・トラブルが発生していくことが多いんです。

もちろん『べき思考』が全て悪いわけではありません。
『買い物をしたらお金を払うべきである』などと当然の場合もあります。

また、向上心というのにも繋がります。
要は、程度の問題なんですよね。

さて、ではどうしたらいいかということになりますが、実はこの『べきである』という言葉を『~にこしたことはない』に変えれば、コミュニケーションはとっても良い方に変化する場合が多いんです。

でも、よく考えたら『べき』じゃなくて『こしたことはない』でもいい場合って多いのではありませんか?

それに、いくらこうある『べき』と言っても、環境の問題やキャパの問題などで無理な場合もありますし。



では、まとめです。

道具的人間関係では、やはり心は段々と寒くなっていきますし、自分の存在意義にも不安を感じるようになってしまいます。

このページを読んでくださった方が、是非コミュニケーション・スキルを益々UPして、有意義な中高年の人生を生きて行かれることを心から祈っています。


NPOハート・コンシャスは、中高年・熟年の心をこれからもサポートしていきます。



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この内容はNPOハート・コンシャスの鷲津が、愛知大学OCでの講義の内容を元に書いております。
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