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孫との上手なコミュニケーション 熟年世代の心理学

一昔前のように、孫が沢山いるという中高年は激減しました。

今や孫が2~3人いるだけでも、孫のいない人からうらやましがられる時代です。

でも、その孫との関係において意外と悩んでいる人は多いんですね。

孫に好かれたいけど、なかなか上手くいかない…。

孫に好かれようとすると子ども夫婦に「甘やかさないで」などと嫌な顔をされる…。

そこで、孫とのコミュニケーションについて、心理の観点から考えてみました。

まず、子育て心理学において重要なこと、是非知っていただきたいことは、これです。
下記の2つの違いは何でしょう?

甘やかす

甘えるのを許す

解答の前に重要な子育てにおける心理学のお話を少しさせてください。

実は、この『甘える』という言葉にあまり良いイメージを持っていない人が多いのですが、子どもの時期において『甘える』ということはとっても大事なんです。

幼児は、『はいはい』が出来るくらいになってくると、いろいろと好奇心が現れ、ママのもとから少し離れて周囲を探索(冒険)に行こうとします。

でも、何か見知らぬものに出くわしたり、例えば何かものが倒れたりしてびっくりすると、すぐにママの所へ戻ります。
つまり、幼児はママという港から海へと航海に出ますが、何か危機やトラブルがあると港へ戻ってくるんですね。

そしてママが、「よしよし、どうしたの?」と心配してくれることによって安心を取り戻します。

このように、ママが港となってくれていることによって、図のように「人(ママ)は信じられるものなのだ」と、人を信じることができる力(これを基本的信頼感と言います)を身に付けます。
それと同時に、「自分は愛される存在なんだ」という自己肯定感を持つことができます。

つまり、【 I am OK 】と【 You are OK 】という枠組みを心に持つことができるんですね。

ところが、探検に出たのはいいけど、何かがあってびっくりして元の場所に戻ったら、ママがいなかったらどうなるでしょう?

そうなると次の図のように「人(ママ)は信じられないものなのだ」と、人に対して不信感や疑いを持ち、基本的信頼感は身に付きません。
それと同時に、「自分はいらない存在なんだ」という自己否定感を持ってしまいます。

I am not OK 】と【 You are not OK 】という枠組みとなってしまうんですね。


人間関係や生き方に悩んでカウンセリングに来られる方の中で、「わたしはアダルト・チルドレンです」という人が結構多いのですが、これは機能不全の家庭で育った人という意味です。

自己評価が低く、人の顔色が気になって自分の欲求を出せず、つらい思いをしている人なんですね。

その人たちは、甘えることが出来ずに育ったのでしょう。

だから、実は『甘えるのを許す』というのは、とっても大事なことなんです。


じゃあ、『甘やかす』っていうのは?

これは実は、そうする人が「相手に好かれたい」からやっている場合が多いんですよ。

なんのことはない、『自分が相手に好かれたいから、相手を甘やかす』、すなわち自分の為なんですよ。
それをやって、好かれて自分がいい気持ちが出来るからなんです。
『甘えるのを許す』は、相手の為なんですけどね。

これが、『甘えるのを許す』と『甘やかす』の違いです。

そして、この【自分の為】というのが、傍からは無意識のうちに見えてしまうので、じぃじ・ばぁばとママの対立が起きることが多いんです。


さて、孫とのコミュニケーションにおいて大事なのは何かと言うと、この【自分の為】というのに関係してくるんですね。

良好なコミュニケーションとなるには、じぃじ・ばぁばが、その【自分(自我)】というものを、いったん脇に置いておかなければいけないんです。

なぜなら、子どもには【自分(自己)】しかないから。
つまり、子どもは自己中心なのが当たり前なんです。
自己を制御する力がまだ育っていないのを、子どもと言うんです。

しょうがないんですよね。それが子どもなんですから。

だとすると、ここでもう片方が自己を持ち出すと、どうやったって自己と自己がぶつかってしまいますよね。
だから、孫と上手くコミュニケーションを取るには、ここはじぃじ・ばぁばが、自己というものを制御するしかありません。
もっとも、これは我慢とか辛抱をすればよいというものではありません。 何でもかんでも子どもの自己の欲求を通していたら、これは『甘やかす』のと大差なくなってしまいますから。
毅然とすべきところは毅然としないとね(ここが難しいところですね)。


では、孫とのコミュニケーションにおいて大事なことをここで箇条書きにします。

1.まず一番大事なのは、【聴く】ことです。
  ついつい話したくなっちゃいますけど、その気持ちは脇に置いておきましょう。
  「そうか、そうか」 「なるほどなぁ」これだけで充分なのです。
  そして、これだけで孫はじぃじ・ばぁばが大好きになります。

2.孫とは【横の関係】で付き合いましょう。
  ついつい『上』から『下』へのコミュニケーションになりがちなんですよね。
  でも、喩え小さくても『友人』のような関係だと考えて付き合いましょう。

3.『褒める』のもいいけど、もっといいのは『感心』することです。
  「偉いね」ではなく「偉いなぁ!」
  「よく出来たね」ではなく、「よく出来るなぁ!」です。
  実はこれが、孫の将来においてのアイデンティティの確立に役立つんですね。


さて、これらの知識は本来は、親にとって大事なことなんです。
こういう子育ての心理学は、本当は子どもが生まれる前くらいから、親が学んでおいた方がいいんですよね。

でも、こんなことは学校ではあまり教えてくれませんし、ましてや会社は教えてくれません。

そして子どもが生まれると、お母さんは超忙しくて、学んでいる暇はなかなかありません。 だからこそ、じぃじ・ばぁばに知っていただきたいと思うんです(実際、愛知大学のオープンカレッジでは、NPOハート・コンシャス理事の鷲津がそういう講座を担当しています)。

孫に好かれ、子育てに疲れているママやパパの役にも立てるコミュニケーションを上手くやれる。
そして、孫の人格形成に、とっても良い影響を与える、そういう心理学を是非ともお役に立てていただけましたら幸いです。




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この内容はNPOハート・コンシャスの鷲津が、愛知大学OCでの講義の内容を元に書いております。
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