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親に不愉快にさせずに終活を薦める言い方や方法

写真 この内容は、9月10日発売の週刊誌「女性自身」(2019年9月24日号)で、『弔活の準備、進め方』(親に不愉快にさせずに、終活を薦める言い方等)について当協会の鷲津顧問が書いた記事が掲載されたものがベースとなっております。)




まずは、「親を悲しませたり怒らせないコツ」について。

人が「悲しむ」とか「怒る」といった場合は、その裏には「〇〇してほしいのにしてくれなかった」(または逆に「△△されたくないのにされた」)という思いが存在します。

となると、大事なのはその「〇〇してほしい」という思いを理解することなんですね。
では年老いた親の、「〇〇してほしい」というのは、一体なんでしょう?

もちろん人によって違いはあるでしょうし、人それぞれだとは思いますが、やはり大きいのは「大事にしてほしい」、「尊敬してほしい」、「やさしくしてほしい」、「関心を持ってほしい」という感じではないでしょうか。

そういう思いを理解し共感して親と話せば、きっとうまくいくでしょうし、逆にそのあたりを考えずに子どもの立場からのみの話となったら、聞く耳さえ持ってもらえないかもしれないですよね。


そしてもう一つ大事なのは、弔活というのは「その人の生きざま」、つまり生きてきたプロセスを伝えていくことだと思います。
もちろんお金のことや手続きのことなども大事ですが、まずはその人の生きざまの最後の締めくくりのページを完成させるという意義を親子で共有し、一緒に取り組むこと。それができれば、親が悲しんだり怒ったりするということにはならないと思います。

さて、そういう考えで「締めくくりのページ」として考えてみると、弔活でやるべきことの順番は、「主役である親が大事と考える順」に進めていった方がよいということがわかります。
すなわち、自分(親)の【介護に関してどうするか】からでしょうね。

お年寄りは一般的には家族に介護してもらうことを望みます。
なぜか。答えはシンプルです。
「気を使わなくてもいいから」、「ワガママが言えるから」。

でも、デメリットもあるんですよね。家族は介護のプロではないため、当然のことながら上手にできないことも多いですし、効率は悪くなります。
そして、親が子にワガママが言えるということは、子だって親にワガママが言えるということになります。
そういうメリットやデメリットをしっかり話し合うのも大事でしょうね。


次に【延命に関してどうするか】。
これはとても大事です。人は頭がしっかりしている時に、延命処置でチューブを何本も体に入れられている人の姿を写真などで見ると、「自分は延命処置は要らない」と言うことが多いのです。
もちろん本人の希望が大事なのですが、お金がどれだけかかるかだけではなく、これも人生の最終ページとしてどのようなページにするかという視点で話し合うことが必要です。

そしてその流れで【お葬式はどうするか】【お墓はどうするか】についての本人の希望をしっかりと傾聴し、話し合ったうえで、いよいよお金に関する話に進めていってはどうでしょう。


親が納得のいった状態で【遺言書の作成】をしてもらい、そして締めくくりのページを完成させるための「親のお手伝いをする」という立場で、【家の処分について】(残された方の老後の住まいなども)、断捨離(親の了解を得ながら手伝う)や【財産・借入金の確認(預貯金・不動産・有価証券):通帳・印鑑・暗証番号 生命保険の確認】を進めていけば、親の「大事にしてほしい」、「尊敬してほしい」、「やさしくしてほしい」、「関心を持ってほしい」などの気持ちに添った形となります。

人間は感情の生き物です。その感情を軽く扱うと、理屈は吹っ飛んでしまうこともよくあるのです。
親だってきっと、子供の知らないところで辛くて悲しい涙を流したことや、悔しくて情けなくて歯ぎしりしたことの100回や200回くらいはあるでしょう。
そういう、親が生きた「人生の意味」を一緒に振り返りながら、ねぎらい、尊重して話し合う感じで、弔活に取り組まれてはいかがでしょうか。




具体的な親への言い方

さて、これらの重要な問題を話し合うならば、出来るだけ面と向かって話した方がいいでしょう。

人は言語だけではなく、表情や身振り手振り、声の大きさやイントネーションなどで情報を判断したり、感情が変化したりします。
電話では表情はわかりませんし、メールはもっとわかりません。

また、年配の方は電話やメールで相談されると、自分が軽く見られているように思いがちです(だからメールは行き違いのトラブルが非常に多いのですが)。

そして、人間は同じ話を聞いても自分がポジティヴな時にはポジティヴに受け取り、ネガティヴな時にはネガティヴに受け取ることが多いので、親の状況を考えて話すきっかけをつくった方が、上手くいく率は上がります。

さて具体的な話し方としては、YOUメッセージ(相手を主語)とするより、Iメッセージ(自分を主語)とした方が角が立ちにくくなります。
つまり、You should ~ (あなたは~すべき)ではなく、I wish ~ (私は~してほしい)という言い方ですね。


介護に関してどうするか

「お父さん(お母さん 以下同じ)にはいつまでも元気でいてほしいけど、万が一介護が必要になった時はどうしたらいいか、お父さんの気持ちを教えてほしいな」


延命に関してどうするか

上記の流れで、気持ちを聞く。別の機会に聞くのなら、延命治療などについて雑誌やテレビで話題になったタイミングで、どう思うかを教えてもらう。


お葬式はどうするか

「お父さんが、されてうれしいなぁと思う葬式はどんな形だろうね?」


お墓はどうするか

これは、決まっていないのであれば、上記の流れで一気に聞いた方がいいでしょう。


遺言書の作成

「僕は、お父さんの気持ちがしっかりとみんなに伝わるように、遺言を書いておいてくれるとうれしいんだけど、どう思う?」


家の処分について(残された方の老後の住まいなども)

断捨離(親の了解を得ながら手伝う)。
家にはそれぞれ大きな想い出がある場合が殆どです。
ですので、まずは家についての想い出を少し話したタイミングでこの問題を持ち出すと、親は自分の気持ちを無視された感は無いので、話が進みやすくなるのではないでしょうか。
「この家にはお父さんの想い出がいっぱい詰まっているよねぇ。だからこそ真剣に考えないといけないと思うんだけど、僕らは残念ながらここに住むわけにはいかないし…。 お父さんはどうしたらいいと思う?」


資産・借入金の確認(預貯金・不動産・有価証券):通帳・印鑑・暗証番号 生命保険の確認

「お父さんには本当にボケないでずっと健康であってほしいんだけど、仮にの話だし、縁起でもない話をしてごめんね。ただ、もしもお父さんに何かあった時にお金のことでゴタゴタしたくないんだよね。だからできたら、お金に関してのことを知っていたいんだけど、どうかな」


なお、子どもの側に言いたいことがあっても、まずは親の気持ちをしっかり聴き、想いを吐き出してもらってから言うというのが大事です。
思いを吐き出すと、人はやっと他の人の言うことに耳を貸そうと思います(器が空になったら、水は入っていきます)。

何も親の思い通りにしろという話ではありません。
子どもの事情も当然理解してほしいですし、そして言うべきことはやはりしっかりと言った方がいいでしょう。

言いにくいからといって先送りするのは、回避以外の何物でもありませんし、お互いの意見や考えをまとめあげることが「和」ということなのですから。
それにはやはり、相手の立場に立って考えてから、聞いたり言ったり行動するというのが大事なんですね。


引用及び参考文献 「女性自身」(2019年9月24日号)光文社



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この内容はNPOハート・コンシャスの鷲津が、愛知大学OCでの講義の内容を元に書いております。
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