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中高年のメンタルヘルス ~悩みとその心理的要因~

中高年のメンタルヘルスというと、職場の問題ばかりが取り上げられていますが、実際に心理カウンセリングに来られる方と接していると、仕事の問題だけではなくいろいろな悩みが存在することがよくわかります。

そして、それがどのような状態かというと、不安とか鬱という話となるわけです。

ところで、まずはその不安についてですが、不安には2種類あるってご存知でした?
1番目は『原因(理由)の有る不安』。
そして、2番目は『原因(理由)の無い不安』なのです。

例えば、『新年度になり、人事移動で上司が替わった。上手くやっていけるだろうか』というのは1番目の不安ですよね。
それに対し、『いつも誰かに見られているような気がする』とか、『いつもと違う手順でやってしまった場合に、一日中不安になる』とかいう場合は2番目の不安です。
漠然とした不安、というのもそうですね。

実は悩んでおられる中高年の方々は、この漠然とした不安を持っているケースもよくあるんですね。
でも、世の中の『中高年のメンタルヘルスにおいての不安の対処法』として出版されている多くのノウハウ本は、一般的には上記【1】の不安に対してのノウハウが多いんです。

ところが、不思議なもので【2】の『原因(理由)の無い不安』を抱える人が、そんなノウハウ本を買い集めるケースが多いんですね。

そして、読んだ直後は『なるほど~』と思って、実行したりするのですが、またすぐに不安がムクムクと湧き出てしまうというパターンを繰り返してしまいます。

じゃあ、【2】のパターンの人は、どうすればいいのか…。
その前に、まずは【1】の『原因(理由)の有る不安』の場合について考えてみましょう。

これは言い換えると、『現在、自分の願望と逆の事態になっている』場合や、それ故に『未来において、ものごとが悪い方へ進んでいくのではないか』と考えてしまう場合などがそうです。

願望というのは、例えば『仕事がうまくいくこと』とか、『自分(家族)が健康であること』とか、いろいろな内容が考えられます。
そして『平穏無事』というのもその1つです。

では、未来の不安についてちょっと例を挙げてみましょう。
例えば、東南海大地震はいつ起きてもおかしくないといわれています。
つまり、明日起きても不思議じゃないんです。

その割には、『心配で心配で』って言う人、そんなにいないでしょ?

あれは、自分の力では何ともならない、と判っているからなんです。
ところで、未来の心配事は、全て自分の努力でなんとかなるんでしょうか?

なんとかなるものも有るでしょうし、なんとかならないものも当然有りますよね
この考え方が大事なんです。

未来に対して、100%完璧に対応することなんて、できるワケが無いんです。
ましてや人間関係の悩みなら、相手の思考や行動に対しての悩みとも言えますよね。
例えば、『上司が替わったが、新しい上司と上手くやっていけるだろうか』というのがそうですけど、人の心を自分の願望通りに何とかしようというのも無理だし、100%完璧に対応するなんて不可能です。

完璧な対応が不可能だとしたら、この話は大地震で悩むのと、理屈は一緒じゃないでしょうか。
要は無理な話を悩んでいるワケです。

ところで、例えば地震の不安に対してなら、我々はどう対応するでしょう?

非常食を買っておくとか、家具を倒れないようにするとか、その程度しかできませんよね。

そうなんです。
人間、【今、出来ることをする】しかないんです。
これは、どんな不安に対しても同じです。


さて、不安を感じると、人はそれに対して考える事すら避けようとします。
でも、避ければ避けるほど、『知らないこと』や『わからないこと』が増えてしまい、『わからない』から恐怖や不安を感じるという悪循環に嵌ってしまうんですね。

【何とかなること】なのか【自分の力だけではなんともならないこと】なのかに、まず分けて考えてみること。
そして、【今、出来ることをする】。

不安になったら、この2つが大事なんです。



中高年のメンタルヘルス うつ病の傾向と対処法

次は鬱についてですが、うつ病になりやすいタイプとしてよく知られているのは下記の人です。

完璧主義
頑張り屋
几帳面
責任感が強い
断ることが苦手
人に頼むより自分でやった方が楽
気持ちを上手く切り替えられない
親が鬱になりやすい人である

そういう人が下記のような状態になったら、要注意!

睡眠があまりとれない(特に、朝早く目覚めてしまう)
だるさが続く
頑張れない(意欲が湧かない)
集中力の低下
好奇心がなくなる
先行きに悲観的
涙がよく出てくる
死にたくなる時がある
特に午前中に気分が重い
食欲があまり無い
性欲もない
著しい体重減少、あるいは体重増加
頭痛や耳鳴りがする


ところで、人は誰でも落ち込むことが有ります。
例えば好きな人や大事な人と離別した場合などでは、上記の状態となっても全然不思議ではありません。
勤めている会社が潰れた時なんかも、落ち込んで当たり前ですよね。

でも、それが長い間続いたら、ちょっと問題です。
落ち込んでいる時は、物事が上手くいかない時が多いものです。
そして、うまく行かないとますます落ち込んでしまいます。
この悪循環が、原因がはっきりしている【うつ状態】から、慢性の【うつ病】へと流れをつくっていく時があるのです。

だから、うつ病は風邪と同じで、罹り始めの対処が大事なんですよね。
早めに休養を取るとか、睡眠を取れるように病院に行って薬をもらってくるとか、認知(論理)療法などの手を使って、悪循環に嵌まり込まないようにするとか、ともかく早めに対処すればかなり効き目があります。

『うつ』の状態というのはどういうものかと言うと、要は『心のエネルギーが少ない状態』と考えていいと思います。

体力が有るとか無いとか言いますよね。
気力も同じです。
そんな感じで【心力】というのを想像してみてください。

体力に例えるならば、普段なら歩いていける場所でも『体力が無い』状態だと、バスやタクシーを使わなければなりません。
背中にリュックを背負っているイメージを浮かべてください。
そして、『悩み事』や『問題』や『不安』は、大小さまざまなビンやペットボトルと考えてみましょう。
それらの中身が『問題』等だとします。

人生は、この『問題』というペットボトルが、次から次へと貴方に手渡されていくようなものです。
そして、『問題を片付ける』というのは、そのペットボトルの中身をカラにしていくことです。

簡単な『問題』なら、その場で解決することができるでしょう。
そして、その場で解決できない問題は、取り敢えず背中のリュックの中に入れておくこととなります。

このリュックの中の、ビンに入った『悩み事』や『問題』や『不安』は、全て貴方が片付けるわけではありません。
蒸発する(時が解決する)ことも有りますし、誰かが片付けてくれる事もあります。

では最初の話に戻りますが、『うつの状態』というのは、この『その場で解決するエネルギー』が少ない状態と、『リュックをかつぐエネルギーが少ない(重いリュックに耐えられない)』状態なんですね。
よく、『うつ』の人に『頑張れ』って言っちゃいけないって言うでしょ?
あれって体力で考えたら簡単にわかる事なんです。

風邪をひいて体力が落ちて、動きが鈍い人に、「一生懸命走れ!」とか、「重いものを担げ!」なんて、誰も言わないですよね。
だから、【心力】が落ちている人に「頑張れ!」と言っちゃいけないんです。
その場その場での問題の処理スピードが落ちていて、しかも重いリュックを担げない状態なんですから。

ところが、困ったことに、体力と違って【心力】というのは、あまりなじみのない概念だし目に見えないものなので、周囲はおろか本人もよくわからないまま【心力】のある時と同じペースで考えちゃうんですね。
つまり、目の前のペットボトルをカラにする(問題を解決する)ことができるような気がしているし、大きく重いペットボトル(悩み事)も、相変わらずキャパのないリュックの中に突っ込んじゃうんです。

無理なんですよね。
ペットボトルの一個一個は持てても、数がまとまれば重くて持てない…。
【心力】が低下すると、そんな事もわからなくなっていくんです。

だから、解決方法というのは、すごく当たり前の事なんですが、【手渡されるペットボトル(問題・悩み事・不安)を減らす】ことです。

もう、リュックは一杯なのだと、自分でも認識し、周囲にも表すことなのです。
2リットルのペットボトルを、元気な時には20本持てても、【心力】が弱っている時には5本しか持てないのです。

次に大事なのは、全てのペットボトルの中身を、自力でカラにしようと思いがちになってしまうパターンから抜け出すことです。
上記のように、ペットボトルの中身がカラになる(問題が解決する)ときは、自分がカラにする場合だけではなく、時が経つと蒸発してなくなっている時だって結構多いのです。

もちろん、「そんなこと言ってても、今、苦しいんだよっ!」と仰る方もおられるでしょう。

その気持ちはわかります。
ただ、『全て自分が解決しなくてはならない』という思い込みは、うつ病の人にとってはいいことではありません。

頑張るのは、やっぱり【心力】の有るときにしないと…。

【心力】が低下している時は、無理なモノは無理です。
できないモノはできないし、「しょうがない」のです。

じゃあ、そんな時には具体的にはどうすればいいのか…。

まずは、そんな時は、自分にペットボトルを渡す人と遠ざかりましょう。
『うつ状態』になる人なんて、いい人ばかりです。

断れない人が多いのです。

ペットボトル(問題)を渡されたら、平気で突き返せるくらいの図太さがあればいいのですが、ついつい受け取っちゃうんですよね。
だから、渡されにくいポジションをとりましょう。
だって体温が40度近い高熱を出している時に、他の人の世話なんてやけるワケがないのですから。

次は「しょうがない」という言葉を受け入れましょう。

オリンピックの陸上選手ならいざしらず、普通の人は100mを8秒台で走れるワケがないのです。
「もぉ 知らん!」 で、いいのです。
例えそれが自分でやらなくてはならないことだとしても…。

「そんな、いい加減な…」と思われるかもしれません。

でも、体力が落ちた時は寝てるでしょ?
どうして体力が落ちた時は体を心配して休むのに、【心力】が落ちた時は心(脳)を心配してあげないのでしょう?
いい加減でいいのです。
『心力』が回復した時に、『いい加減じゃない』人でいればいいじゃないのでしょうか。



中高年のメンタルヘルス 認知療法

さて、不安やうつに効果すあるのは、やはり認知療法だと思います。 そこで、ここでは悩みの種となる『障害』が、心の中にないかを確認してみましょう。

まずは
【1】 完璧思考
これは、完璧を目指すということだけではなく、物事を【白か黒か】、オール・オア・ナッシングで考えてしまうことも含みます。

一つや二つのミスとか欠点が見つかっただけで、『もうダメだ。ぶち壊しだ』とか思ってしまいませんか?
いつだって白か黒か、はっきりとしたいんですね。
完璧思考 というとカッコいいのですが、実はこれは『不安の裏返し』とも言えるんです。
また、言い方を変えると、とにかく『許せない』んですよね。
何でもかんでも『許せない』んじゃ、そりゃ心も疲れます。
もし、このパターンに陥っていたら、「それもそうだね」とか「まぁ、いいか」という言葉を意識して使うようにしましょう。


そして、この完璧思考と似た感じなのがこれ。
【2】 ~べき思考(シュッド主義)

これがコミュニケーションにとって、大きなネックとなる場合が多いんですね。

『~であるべき』『~しなくてはならない』『~であって当然』『そんな事は常識でしょ』
これらすべてが、【べき思考】から発生します。

子供は先生の言うことを聞くべきである。

先生は人格者であるべきである。

母親が子供の教育をするべきである。

父親は立派であるべきである。

妻は家事をきちっとやるべきである。

夫は優しくあるべきである。


…結局このあたりから苦悩が発生していくんですよね。

もちろん『べき主義』が全て悪いわけではありません。
『受験生なら勉強をするべき』などと当然の場合もあります。
また、向上心というのにも繋がります。
要は、程度の問題なんですよね。

もし、これに思い当たる点があれば、『べきである』という言葉を『~にこしたことはない』に変えれば、とっても良い方に人生が変わっていきます。

さて、実はこれらの思考は、子供の頃に知らず知らずのうちに頭の中に植えつけられた場合が殆どなんですね。
つまり、【完璧思考】や【べき思考】は、父親か母親から受け継いだ、ということです。
そして、これらの思考が度を越した場合は、まず間違いなくその人や家族の心を蝕んでいきます。
早めに「それもそうだね」とか「~にこしたことはない」という言葉を多用するようにしたほうがいいでしょうね。


【3】過度の一般化

一事が万事、という思考です。

友達がみんなで花火を見にいったらしいけど、自分には誘いの連絡が無かった、という場合に『やっぱりな~ 僕なんか好かれるワケがないんだ。いつだってこんな事さ。何をやっても好かれないんだから』とか考えてしまうケースが、これにあたります。

『いつも、こうなんだよな~ 』 ってヘコむ時って確かにありますよね。
でも、いつだって上手くいかないというのは、本当に、つまり『100%いつも上手くいかないのか』を自分で問い直してみましょう。

同様に、何をやっても、というのは本当に何でもやったのかを問い直しましょう。
いつだって、とか何をやっても、というのは、100%という事ですよね。
本当に100%でしょうか?

他にも『みんな』とか『誰も』という言葉が出てきた時も要注意です。
「誰も私の言うことなんて聞いてくれないんです」とか、「みんな私の事を無視するんです」とかがそうですね。

【4】 早まった結論

これは2タイプあります。
1つは『読心術』と呼ばれており、相手の気持ちを勝手に先走って判断してしまうタイプ。
『妻の気持ちは、きっとこうに決まっている』とか、『こんな時、僕がどんな思いをしているか知っているはずだ』というタイプですね。
これってついついやっちゃうんですが、血の繋がった親子、そして同じ環境で育った兄弟でさえ、【言わないと伝わらない】のですから、冷静に考えると、凄く無理があることに気付くのですが…。

そして、もう1つは『宿命論』。
仕事でちょっとしたトラブルがあっただけで、『やっぱり僕はこの会社では上手くいかないんだ。』と暗い結論を出してしまうタイプです。
このタイプは、悲観が悲観を呼ぶ悪循環にはまってしまう可能性が高いので、気の毒なタイプと言えるでしょう。
このパターンも、『どうせ』とか『やっぱり』という言葉を使う場合が多いんですね。これらの言葉を使う時は【悪循環】に既に陥っているのではないか、チェックしてみましょう。

【5】 拡大視と縮小視

降りかかってきた嫌なことや、発生したトラブルを拡大して考え、自分の能力や問題解決の可能性を縮小して考えるタイプです。

【6】 レッテル貼り

極端な考え方で、物事を決め付けるタイプです。
ステレオタイプ(紋切り型)で発言する人がいますよね。
『女は人を使うのがヘタだ』とか…。
【偏見】はステレオタイプの最たるものです。

そして、自分にレッテルを貼る人がいます。
『僕は有名大学を出ていないからやりたい仕事をできない』とか。
そうじゃなくて、実は自分にレッテルを貼るような事を言うから、道が開けないんですけど…。
つまり、ディスカウントを、自分に対してやっているワケです。



さて、うつ病に罹りやすいタイプとして、【自責思考】が強すぎるということが挙げられますが、この自責思考に陥りやすいのは、『怒りを上手に表現できない人』が多いんですね。

親って、よく子どもに『怒っちゃダメっ!』て言いますよね。
あれがまずいんです。
もう少し正確に、『ちょっとした事で怒っちゃダメっ!』とか、『自分の都合だけで怒っちゃダメっ!』とか、『短気はダメっ!』とか言わなきゃいけないんですね。

でも、『怒ってもいい』んですよ、ケースによっては…。
と言うより、人間、怒るべき時には怒らなきゃ、どんどん抑圧することが増えていってしまうことが多いんです。

それを、何でもかんでもひっくるめて、しかも一貫した基準も無く、場当たり的に『怒っちゃダメっ!』とか親や先生に言われると、子どもは『とにかく、怒っちゃダメなんだ』と怒りを抑圧する事を覚えます。
でも、どうしてもその【怒りの感情】を上手く抑圧できなかったり、処理できなかったりした時は、その子は『怒りの表情』は出せずに、『困惑の表情』がついつい出てしまうんですね。
そして、それは大人になっても変わりません。


ちょっと例を挙げましょうか。

ある押し売りが得意なセールスマンがいたとします。
彼が例えば街の路上で、実際に使えもしない『映画やパーティに使える会員証』を売りつけていたとしましょう。
最初に彼が声をかけたのは、【怒りの表情】を上手く表せる人でした。
もちろん、彼はトラブルになる前に押し付け販売を中止します。

次に、声をかけたのは【怒りの表情】を上手く表せない人でした。
その人は声をかけられ、ワケのわからない会員証を薦められると、【困惑の表情】を出してしまったんです。

ところがこの【困惑の表情】というのは、実は押しの強い相手には『もう一押し!』と思わせてしまうんですね。
この後の流れは、ご想像のとおりとなります。

これは別に『押し売り』に限った話ではありません。
女性でも、よく男性に声をかけられ困ってしまうタイプっていうのは、大体このパターンなんですね。

さて、『断るのが苦手』で悩んでいる人にも、実はこのタイプが多いんです。
分析してみると、『断るのが苦手』というより前に、怒りの表情を上手く表せない為に『断りにくい雰囲気』を自分で醸し出しちゃっているんです。

そういう人は、怒りの表情を上手に表す練習が必要となります。
基準は【それを怒らないと、後々寝起きが悪くなりそうな気がするかどうか】です。

これが出来るようになると、【断りたい事】が、最初から近づいて来ないようになります。

仏教でも不動明王のように怒った顔の仏像って色々ありますが、あれは世の悪に対して怒りを表し、やさしい仏を守っているんですね。

やさしいばかりが良いとは限らないんですね。
そして、守るためには【怒りを表す方法】が必要な時もあるということです。



中高年のメンタルヘルス まとめ

ではいよいよ冒頭の話に戻って、『原因(理由)の無い不安』についてのお話です。

中高年になってくると、若いころのような根拠の無い自身は持てませんし、或る程度世の中のこともわかってしまい、自分の崎というものが見えたような気がします。

そして、人間が一番恐れる『死』というのも、喩え意識しないでも、つまり無意識の中に置いていても、徐々にふくらんでいきます。

そうすると、やはり漠然とした不安や、自分の存在についての不安が起きてきても不思議ではないわけです。

そこで、フランクルという精神科医のお話を少しご紹介したいと思います。
彼は実存セラピーというカウンセリング法で有名なのですが、第二次大戦のおり、あの悪名高いナチスドイツのアウシュビッツ強制収容所に送り込まれ、何度も死に直面しながらも生還したんですね。

その体験が元となり、人生の【意味】について深く考えるようになり、素晴らしい理論や本を何冊も残しました。

その中の一つにこんなことが書かれています。

ある末期癌の患者が、『人間、死んでしまったら何も残らない』と沈んでいたとします。
するとフランクルは、こう聞きました。

『あなたが今までの人生において、楽しかったこと、苦しかったけど一生懸命やったこと、愛し合ったことなどは、誰かが消し去ることができるでしょうか?』

患者は答えました。
『いいえ、誰にも消し去ることはできません』

そして、はたと気づいたんですね。
自分の人生には、確かに【意味】が有ったということに…。


フランクルはこう考えました。

1.『未来』というのは単なるイメージであって、実際は何もない

2.そして、『今』という瞬間を通って、『未来』は『過去』に流れこんでいく

3.もし、『今』何も考えず、何もしなければ、過去には何も流れ込んでいかないが、『今』何かをすれば、それは【意味】を持って過去へと流れていく。

4.そしてそれは【意味のある過去(人生)】を形成していく。


(出典 「<生きる意味>を求めて」V・E・フランクル著)


そうなんですよね。
だから、冒頭の『不安』についてのところでも書きましたが、やっぱり【今、ここで】が大事なんです。

この大事な『今』を、『未来の不安』や『過去の後悔』に使ってしまうと、それこそ意味の無い人生になってしまいます。
【今、ここで、何ができるか】なんですよね。

そうは言っても我々はたいていの場合、『未来の不安』か『過去の後悔』を持っています。
でも、今度は下記の文を読んでみてください。
* ‥ * ‥ * ‥ *

過去を思い後悔したり、昔は良かったと愚痴を言っていてもしょうがない。
過ぎ去った出来事は、手放したモノと同じなのだから。

また、未来というのは未来であって、まだ到達していない。
だから、今ここで起きている事柄を、今ここでよく観察するのが大切だ。

そして、いちいち不安になったり、あれやこれやと心をフラフラさせず、観察しては理解するということを一つずつ進めていきなさい。
今日しなければならないこと、今日できることを一生懸命にやりなさい。


* ‥ * ‥ * ‥ *


これって認知療法?

いえいえ、実はこれ、お釈迦様の言葉(中部経典)なんです。

お釈迦様の説法ということは、人は二千数百年前にも、こうやって過去を後悔し、未来を不安に思い生きていたということですよね。
そして、やっぱり【今、ここで!】なんです。

不安がなんとかならないのか といくら考えても、結局はこれしかないのではないでしょうか。

お釈迦様みたいな頭の良い人が、【今、ここで!】以外に考えられなかったのですし、それから二千数百年もの間 頭の良い人達が沢山考え続けたにも関らず、現在も【今、ここで!】としか本に書いていないのですから。



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