交流分析 エゴグラム

交流分析という心理療法の中で、人は誰でも心の中に5つのキャラクターを持っているといわれます。
まず一つ目の「CP」は、厳しいけれど正義の味方のお父さん。二つ目の「NP」は、暖かくやさしいけど、少し甘やかし気味のお母さん。
三つ目の「A」 論理的、客観的なしっかりものの大人。
四つ目の「FC」は自由奔放でワガママだけど創造力のある子供で、五つ目の「AC」は、従順で協調性のある、少し引っ込み思案な子供です。
この NP・CP・A・FC・AC の強弱とバランスを、グラフであらわしたものがエゴグラムです。
自分の中の五つのキャラクターのバランスを知ることで、性格や行動の特徴がわかります。

次の質問に答え、 CP ・ NP ・ A ・ FC ・ AC ごとに得点を集計してください。
その点数を、下記のグラフに書き込み、折れ線グラフを書いてください。
それがあなたのエゴグラムです。
そして、自分のエゴグラム曲線が書けたら、10パターンの例の中から、自分のタイプを探してみましょう。

エゴグラム

5つの項目について10個ずつの質問があります。
自分の性格に合ったものであれば○を
、そうでなければ×を、どちらともいえないときは△をつけてください。
印をつけ終わったら、○を2点、△を1点、×を0点とし、それぞれの項目(CP・NP・A・FC・AC )ごとに合計点を出してください。



C P 合計   点

1 正義感が強いほうですか?
2 人の欠点に敏感なほうですか?
3 一度言い出すと、後には引かないほうですか?
4 道徳の欠けている人は絶対に嫌ですか?
5 義務を果たそうという思いは強いですか?
6 人の裏切りは許せないほうですか?
7 人を引っ張る立場になることがあるほうですか?
8 良い悪いをはっきりさせたいほうですか?
9 どちらかというと完璧主義者ですか?
10 時間を守るということに、うるさいほうですか?


N P 合計   点

1 自分はお人好しなほうだと思いますか?
2 ついつい同情してしまうことがよくありますか?
3 自分は思い遣りのあるほうだと思いますか?
4 面倒見が良いほうですか?
5 小さな子や動物は、どちらかというと好きなほうですか?
6 人を励ますことがよくありますか?
7 どちらかというと人の失敗を許せるほうですか?
8 後輩や年下を甘やかすほうですか?
9 たまに自分のことを「おせっかいだなぁ」と思ったりしますか?
10 自分が忙しくても、ついつい人を手伝ってしまうほうですか?


A 合計   点

1 どちらかというと客観的に考えられるほうですか?
2 相手の嘘を見抜けるほうですか?
3 公平ということを大事にしますか?
4 損得に敏感なほうですか?
5 論理的なほうですか?
6 よく考えてから行動しますか?
7 現実的なタイプですか?
8 自分は合理的な考えをするほうだと思いますか?
9 昔からどちらかというと、しっかりしているように見られるほうでしたか?
10 人よりも喜怒哀楽の度合いが少ないほうですか?


F C 合計   点

1 いろいろな事に興味を持ちやすいほうですか?
2 気分によって行動が変わりやすいですか?
3 アイデアが浮かぶほうですか?
4 はしゃぐ事はどちらかというと好きなほうですか?
5 何かにつけ、面白くさせようとするほうですか?
6 出たとこ勝負をすることが、あるほうですか?
7 目立つのは、どちらかというと好きなほうですか?
8 言いたい事を我慢するのは、苦手なほうですか?
9 ユーモアのあるほうですか?
10 人に合わせていると、イライラしたり疲れたりする事がよくありますか?


A C 合計   点

1 人の顔色に敏感なほうですか?
2 妥協するほうですか?
3 断るということが、とっても苦手なほうですか?
4 人の言うことが、気になるほうですか?
5 うまくいかない時は、ついつい自分のせいだと思ってしまうほうですか?
6 言いたい事があっても、言えないほうですか?
7 怒られたりすると、ずっと気にしてしまうほうですか?
8 自分の感情を押さえてしまうほうですか?
9 人に評価されないと自信が持てないほうですか?
10 「怨み」はひきずってしまうほうですか?

Copyright(c)2013 合同会社ベルコスモ・カウンセリング


各項目の合計点を下の表に書き込んでください。
グラフの一番上が20点、一番下が0点です。
そして出来たグラフが、あなたのエゴグラムです。


20
   
            
   
            
   
            
   
            
   
            
   
            
   
            
   
            
   
            
   
            
 CP 
 NP 
  A  
 FC 
 AC 



テストの結果、あなたのエゴグラムはどんな曲線を描きましたか?
次の例の中から、あなたのタイプを探してみましょう。
「への字型」になった貴方は、
優しく思いやりがあるので、日
本人としての人間関係において
は理想に近いタイプです。
円満タイプと似ていますが、暖
かみより合理的な考えを重視し
ます。
冷静で客観的な長所を持ち、欧
米では理想的なタイプと言われ
ています。
「N字型」は自分を犠牲にして
でも、人に対してやさしくし、
気配りが出来るタイプです。
ただ『察する』ことを大事にす
る為、自分が疲れてしまうこと
が多いでしょう。
「逆N字型」の人は、自分に厳
しくエネルギーも高いタイプで
す。仕事でリーダーシップをと
ったり、責任感も強いのですが
、人の気持ちより自己主張を優
先していまうので対人関係でト
ラブルが起こる事もあります。
「V字型」の人は、自分にも他
人にも厳しく、ストレスを抱え
込むタイプです。
こうあるべきという考えを持っ
ていても、それを言えず、自分
を責める時が多いので悩みが絶
えません。また客観性よりも主
観性が強い為、人間関係も苦労
します。
「逆への字型」の人は、自他と
もに否定しやすく、あまり人に
は好かれません。
『許す』ことがなかなかできな
いので余裕もなく、一人で悩み
がちです。
「W字型」は、完全主義の人が
多く、また、こうあるべきとの
思いと現実のギャップに悩むタ
イプです。頭が良いだけに、し
ょうがないと諦めることも出来
ず、人や自分を責めてる事も多
くうつ病にもかかりやすいので
、少し自由奔放さが必要です。
「M字型」は明るく楽しい人が
多いようです。比較的ストレス
もたまりにくく、自ら楽しめる
タイプです。ただMの角度が急
な場合は、ワガママとよばれる
場合もありますので注意が必要
です。
左が一番高く右下りの場合は、
頑固な人が多いですね。正義感
も責任感もありますが、あまり
融通が利きません。『上から目
線』だったり、怒りやすい性格
で、反発を受けたりします。ス
トレスもたまりがちです。
9とは逆に、左が一番低く右上
がりの場合は、大人しく、人に
気も遣いますが、リーダーシッ
プをとったり、面倒見とかは苦
手です。
自信を持てずくよくよと悩むこ
とも多いタイプです。


結果はいかがでしたか? もし、あてはまると感じ、なおかつそのパターンが自分自身で好きではなかった場合は、各項目のポイントを上げるように努力すればいいのです。


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交流分析の活かし方

交流分析を知った貴方に、悩みを生じにくくする、または生じた悩みを軽くする良い方法をお教えしましょう。
何かの事柄において自分の心の起きた感情を、自分で心のどの部分(CP・NP・A・FC・AC)から発しているかを見るのです。
例えば、彼女(彼)がデートの待ち合わせに1時間遅れたとしましょう。
きっとその時、人によっていろいろなパターンの感情が心に浮かぶと思います。

「どうしたんだろう、事故にでもあっていなきゃいいが・・」

「忙しい中を無理に時間を都合しているのに、どういういい加減なヤツだ!」

「あれ? 待ち合わせの時間(場所)を間違えたかな?」

…どういう感情でもいいのです。正しい、正しくないとか、良い、悪いの判断をせずに、ただ「今のこの感情はCPかな?それともFCかな」と心を見るだけでいいのです。
「~だから治そう」とか、「いけない」とか自責の念を抱くのは、かえって心に無理がかかるので、ただただ見てください。
これをしていると、心の状態はどんどん良くなっていきます。
それとともに体の調子もよくなります。ただ、その癖がつくまでが、少し大変ですが…。

悩み多き方へ

ACの点が高くFCの点が低い方は、心の病気にかかりやすいので注意しましょう。
対処法としては【感嘆詞をたくさん使うこと】と【感情を表に出すこと】をお薦めします。

「わ~ いいじゃん」
「あっ それって好き!」
「えぇ~っ なんか嫌いだな~」
「いいじゃん!」
「え~っ 勘弁してほしいな~」
などの言葉です。
これらを、如何に周囲を傷つけないように言えるか。これが上記の点数のタイプの人へのアドバイスです。
それと、【世間様】をあまり気にしない、というのも大事ですね。


交流分析で出てくる言葉


ストローク

交流分析では、人が人に対して何かしらのエネルギーを発信することをストロークと呼んでいます。
このストロークにはプラスのものとマイナスのものがあり、プラスは字のごとく与えられた人にプラスの作用をするもので、マイナスのタイプはマイナスの作用をします。(他にもストロークは<言語的なもの>と<非言語的なもの>、<条件付なもの>と<無条件なもの>、という分類があります。)

さて、ここで問題となることがあります。人間はプラスのストロークを受けるのは勿論うれしいのですが、ストローク(人からの自分への働きかけ)が全くないのが最も辛く、無いよりはマイナスのストローク(人が自分を傷つける働きかけ)を自分から望んでいく、という事がわかったのです。

 つまり人間は、誰にも相手にされないよりは、人に傷つけられる方を選ぶのです。

この事と似た理論となりますが、上座仏教(原始仏教・・日本では小乗仏教とも呼ぶ)のスリランカの長老のA・スマサナーラ師は
「心は刺激(Stimulation )が欲しいのです。
刺激の種類などは別にどうでもいいのです。
とにかく、心が体に言っていることは『刺激をくれ。どうでもいいから刺激をくれ』ということです。
心はよい刺激であろうと悪い刺激であろうと区別しません。
人間は悪いことをするとけっこう快感を感じますし、よいことをするときも快感を覚えるものです。
うそをつくなと言っても、うそをつくことにすごい刺激があるので気持ちがいいのです。
あるいは、ぜんぜんうそを言わない清らかな生活をすると、それもまた気持ちがいいのです。
心は刺激だけを求めていて、ほかの何をも求めていないのです。
だからこそ心は育てる必要があるのです。
我々の心はほうっておけばどこへ行くかわかりませんし、刺激があれば何でもやります。赤ちゃんと同じなのです」
と述べられています。

さて、これを子育てで考えてみましょうか。

子どもが整理整頓をしたとしますね。
それをお母さんは、『片付けてあたりまえ』と思い、子どもに何も声をかけなかったとします。
ところがこのお母さんは、子どもが片付けなかった場合はガミガミと叱るんですね。

さて、これって子どもの側からすると、
・片付けをしたら親からストロークをもらえない
・片付けをしなかったら、(例えそれがマイナスであろうとも)ストロークをもらえるとなります。

つまりこれって、お母さんは一生懸命に子どもが片付けをしないように【強化】しているわけですね。


これ以上進むと話が哲学の方に行きそうなのでこの辺でストロークの話は終わりにしますが、「いじめ」などの記事を目にした時は、このストロークの話を思い出してみてください。



やりとり分析

どの自我状態から、相手のどの自我状態へコミュニケーションを投げかけ、またそれが相手のどのような自我状態から、どの自我状態へ向けて返されるかを分析すること。

期待した答えが返ってくる場合は『平行交流』といいます。



そして期待した答えが返ってこない場合は『交差交流』といいます。



また、言葉と本心が違うやりとりを『裏面交流』と言います。


(実線が言語、点線が心の中の言葉です)

ところでこの『やりとり分析』って、ここまででレクチャーが終わってしまう場合が多いんですよね。
「ややこしい裏面交流を続けているとゲームになる可能性もありますから、注意してくださいね」、以上終わり、みたいな感じで…。

でもね、これをもう少し深く考えてみると、我々日本人が陥ってしまうコミュニケーション・トラブルに気付くことも多いんです。
例えば下図の裏面交流をご覧ください。
この例は日本の夫婦によくある、実は大問題なんですよ。



夫が妻に「君は本当に人の気持ちがわからない人間だね」と怒っています。
そして妻は、気が付かなかった自分を責めつつ、そしてどうして乙とがそこまで怒るのかもよくわからず、「すみません」とひたすら謝る、という構図です。 

さて、妻が気付いていない重要なことは何か…。
それを説明しますね。

我々日本人には、妻のことをまるで母親のように思っている夫、つまり男性が本当に多いんです。
早い話が、無意識レベルでかなり甘えているんですね。
この例もそうです。

実は心の奥底では『察してよ』と、夫のチャイルドが妻のNPに甘えているんですね。
ところが夫はそのチャイルド(FCやAC)の思いを、言語レベルでは、まるで妻を叱責するかのようにCPから発信しているわけです。
上から下へ、という感じなんですね。

さて問題はその後です。妻は叱責されたと受け取り、ACから『すみません』と謝っていますよね。
さぁここです!
おわかりですか?

いくら妻が から夫の に謝っても、夫の怒りは収まらないんですよ。
だって夫の怒りの出所は、実はCPではなくチャイルドに在るんですから…。
そして求めているのは妻がNPで夫のチャイルドの思いを察してくれることなんですから…。

的外れになっちゃっているんですね。
だから妻がいくら謝っても、返って夫のチャイルドの怒りは「わかってくれていない!」と増幅していくことも多いんです。

こういう構造なんですよね(下図)。



だからこういう場合は、妻はとりあえず謝るのはいいけど、いつまでも謝っていたら返ってぎこちなくなっちゃうので、ともかくその後に夫をかまってあげればいいんですね。
「うわっ、めんどくさっ!」って思われる女性も多いとは思いますが、しょうがないんですよね~。

これを理解できている女性が「男を手のひらで転がす」人と呼ばれるんでしょうね。


(ここまで「ハート・コンシャス」鷲津秀樹著より改変して引用)

ゲーム

交流分析では、人間関係の中で、同じパターンを繰り返し、仲間をみんな不愉快にさせてしまう行動様式をゲームと言います。
よく紹介されるのが「キック・ミー」や「さぁ とっちめてやるぞ」ですが、スパイラル状に気持ちのトラブルを生み出す、このいろいろなゲームについては、パターンとかタイプ、及び原因などは書き表すのは可能なのですが、対処法については簡単には書くことができません。
交流分析を詳しく説明した本を読んでみてください。




基本的な構え

 自分及び他人に対しての受け止め方を、交流分析では次の4つに分類します。

1 私はOKである。あなたもOKである。(協調 共存)
2 私はOKでない。あなたはOKである。(回避 孤立)
3 私はOKである。あなたはOKでない。(独善 排他)
4 私はOKでない。あなたもOKでない。(拒絶 自閉)





もちろん、目指すのは1のタイプです。

ただ 『 I am OK 』と思っている人って多いように見えますが、実は『他人に評価された時だけ I am OK 』って人が意外に多いんですね。

例えば、ある人が彼女にカワイイ携帯のストラップを貰ったとします。
そしてその人はそれをカワイイと思って大事にしていたとします。

ところがそこへ誰かが、そのストラップを見て『あ、これ知ってる。100円均一ショップで売ってた!』と言ったとします。

そういう時って、やっぱり人ってガッカリしちゃうんですよね。
その後すぐにはずしたりして…。

これはモノの話ですが、自分についても一緒なんです。
すぐに他人の評価で変わっちゃうんですよ。
無意識のうちに『 I am OK 』も『 You are OK 』も 【人に評価された時は】という条件付きになっちゃっている時が多いんです。

だから、本当の意味で『 I am OK』となるには、しっかりとした自分の基準(モノサシ)を持てるようにならないといけないという事ですね。


もう一つ、例を挙げますが、例えば上司とソリが合わない場合を考えてみましょうか。

その上司に何かに付けて嫌味を言われたり、叱られたとしますね。
もちろん云われの無い事で非難されたり、馬鹿にされたりする事もあるでしょう。
納得のいかない仕事を押し付けらたりするかもしれません。

そんな時に「『あなたもOK』なんて言えるワケがないじゃないか!」と思うのは当然です。
ただ、そう思った時に理解してほしいのは、どんな事を言おうがやろうが、それは『上司の勝手』だという事です。

そして、それが今現在の流れなのですから、『流れを変える』とか、『他人の思想や行動を変える』という、莫大なエネルギーを突っ込んでもできるかできない事に、毎日悩んでいてもしょうがないんですよね。

「じゃあ、どうするんだ?」
…という問いの答えは、「上司なんだから言いたい事を言わせておきなさい」 なんですね。

これは上司の言葉を『無視する』とかいう事ではありません。

例えば自分は『良い』と思った行動に、上司が『悪い』と言った時、「なるほど、貴方の角度から見るとそうなるんですね」と考えることです。
そして、「人それぞれいろんな見方があるもんだなぁ」と思えるならば、それはとっても素晴らしいことです!

交流分析では普通は上記の1から4のように書いてありますが、『私はOKである。そしてあなたもOKであるように見よう』と考えると、実行しやすそうですね。



時間の構造化

1日の時間の構成がどうなっているかを、交流分析では上記の「ストローク」の程度を判断材料として分析します。
以下はストロークの薄い順番(プラス、マイナスの質は問わず、濃い薄いだけで判断)となっています。

1 閉鎖
ストロークが無い状態です。引きこもっている場合や、周りに人がいても全く交流の無い場合(例えば居酒屋のボックス席に独り寂しくいる場合を想像してください。)がこれにあたります。

2 儀式 日常的な挨拶や、儀礼的な会話、仕事としての機械的な会話など、ほんの少しプラスを感じさせるストロークのやりとりです。

3 雑談 ひまつぶしとも言います。軽いやりとりです。

4 活動 やりがいのある事や生きがいなどによってプラスのストロークを得られる状態です。

5 ゲーム 上記の「ゲーム」です。マイナスの不愉快なストロークのやりとりです。

6 親密 これらの中で最も内容の濃いプラスのストロークです。

さて、自分の1日を、この6つに分けて割合を書き表してみましょう。
心身症や心の病気になってしまった場合、『親交』などの割合が少なく、『閉鎖』の割合が大きい事が多いのです。

ただ、最近の傾向としてはネットやスマホの普及に伴い『閉鎖』が少なくなってきました。
これはこれで静かに考える時間が無くなったり、ネットやスマホの依存になってしまったりで問題です。




人生脚本

人は子ども時代に親や周囲の環境に影響され、或る程度の【心の枠組み】ができあがってしまいます。
そして、その枠組みは大人になってからも、その人の思考や行動のパターンに使われてしまいます。

それが結構な枠組みならいいのですが、中には『そのおかげで苦労する』ものも有るんですね。
例えば程度を超えた【完壁主義】や、【~するべきである(~せねばならぬ)】という考え方がそうです。
また、親の無茶な欲求に子どもが合わせてしまう癖がついたりもします。

つまり親の【P】から子どもの【P】へとインストールされていったり、親の【C】から子どもの【C】へ影響を及ぼしたりした結果が子どもの人生において大きな問題となったりする訳ですね。
交流分析ではこれを人生脚本として捉え、どのように書き換えていくかを考えます。


禁止令

人生脚本という心の枠組みに大きな影響を与えるものの中に、子どもの頃に親から受けた禁止令というのがあります。
グールディング夫妻は12種類定めて、それを【禁止令】と名づけました。
(グールディング夫妻の禁止令は、< >内の言葉です。)

-----------------------------------------------------
1 おまえが男だったらなぁ <男(女)であるな>

2 遊んでいる暇があったら勉強しろ <楽しむな>

3 子供なんだからまだ無理だ <成長するな>

4 おまえは肝心なところで失敗する <成功するな>

5 忙しいから○○できない <実行するな>

6 おまえはバカだ <重要な人物になるな>

7 自分の家はよそと違う <仲間入りするな>

8 むやみに人を信用してはいけない <信用するな>

9 体が弱いのだから無理をするな <健康であるな>

10 親の言うことを黙って聞け <考えるな>

11 泣く子は嫌い <感じるな>

12 おまえなんかいなければよかった <生存するな>

-------------------------------------------------------

これの影響については下記のページをご覧ください。
https://bellcosmo.net/kinsi.htm


さて、これらの言葉が、例えば不登校などの不適応行動を引き起こす原因になる可能性が有るんですね。
しかもこれは結構、大人になっても引きずるんです。
ここ一番っ! って時に弱い人っているでしょ。
そういう人は、子供の頃に『おまえは肝心なところで失敗する (成功するな)』っていう禁止令を、よく言われていた可能性があるんです。

でも、こういう言葉って、よく使っちゃいますよね。
ただ例えば 2番の「遊んでいる暇があったら勉強しろ」とか、3番の「子供なんだからまだ無理だ」などは、絶対に使ってはいけない!っていう訳ではないんですよ。
使い方に問題が有る場合はとってもマズイ という事です。

ところで、講演やセミナーで、この話をすると、『私は【おまえなんかいなければいいのに】なんて言った事はないですよ!』とおっしゃる方が沢山おられます。
確かに、この言葉そのままを言う人は少ないでしょう。
でも、夫婦問題のカウンセリングにおいて意外とよく聞く言葉がこれ…。
『本当はずっと前からお父さんと別れて家を出て行きたかったんだけど、オマエ(子供)がいるから辛抱し続けてきたんだよね~』

これって意外とよく有る話なんですよ。
でもこれは、子供にとっては『貴方(子供)がいるから、私は不幸な人生を送り続けねばならない』、つまり【おまえなんかいなければいいのに】の同義語になっちゃうんです。
ちなみに、下記の言葉を耳にしたことはありませんか?


///////
【うちの子供は、とってもお茶目なんですよ。
先日も夫と私がちょっとした言い合いをしていたら、おかしなところでつまづいて転んだりして、思わず2人とも笑い出しちゃって…。
夫なんか、さっきまで目を吊り上げていたのに、にこにこしちゃって『オマエは何をやってもダメだな~』 なんて言っちゃって】


///////
【ウチの主人は、いつも『オレは男だ!』って感じでいばっているのに、
子供については女の子が良かったみたいで、よく私に『女の子が欲しいな~』
って言うんですよ。
ウチは男の子が二人なので、近所の家のお嬢さんをみると『いいな~』なんて羨ましがっちゃって…。
確かに女の子は大きくなったら家事を手伝ってくれたりするし、服を買ってあげても喜び方が違いますから、私も欲しいんですけどね】


///////
【私は東京から嫁いできたので、どうもこの地方の方言は馴染めないんです。
『村のつきあい』も苦手ですし…。
でも、主人はいつも仕事で帰りも遅く、たまの休みはゴルフに行ったりするので、話し相手はこの子だけなんですよ。
ただこの子がとっても優しい子で、私の事をとってもわかってくれて、もう一心同体のような感じだから毎日が過ごせるようなものです】


///////
【なんか毎日が忙しくって…。
今日も地域の集りが有って子供の食事もキチンとできなかったし、明日の休みに子供が買い物につきあってって言ってたけど、植木屋さんがくるから行けないし…。
悪いとは思っているんですけどね】


///////
【昨日は子供につきっきりだから、疲れちゃった。
なんか咳き込みがひどくって…。
ウチの子供って小さい頃から体が弱いんですよね。
いつもこっちが忙しい時に限って喘息が出たりして…。
もっともこっちもいつだって忙しいからそういう時だけはかまってあげないとね】

----------------------
これってひょっとしたら禁止令を子どもに発しているケースになっちゃってるかもしれません。
上に書いた禁止令のどれにあたるか、当ててくださいね。

しかし我々って、結構使っているんですよね。気付かずに…。
だから、問題なのですが。

逆に、禁止令に見える言葉でも、ケースによってはOKの場合があります。
例えば、【3 子供なんだからまだ無理だ (成長するな)】というのについて考えてみましょう。

テレビでオリンピックなどを観て、小学生の低学年の子供が宙返りをしようとした場合、『(危険だから)子供なんだからまだ無理だ』と言うのは、当たり前ですよね。
怪我でもしたら大変ですから。
だから、この場合は禁止令(子供に言うと後々悪影響が出る言葉)にはあてはまりません。
ところが、実は子供が夏休みにこの『成長するな』という禁止令を、よく受けている場合が有るんです。

例えばお子さんが夏休みにポスターを描くとかの宿題が有ったとしますね。
そういう時に、こんな話をされる親御さんがちょいちょいおられるんです。

「もうウチの子供はヘタだワ遅いワで、終盤にこっちが手伝ってやって、なんとかマトモなのを提出できました」

これが、【成長するな】という禁止令にあたるんですよね。

この場合のように、要は『いらいらしたから』とか、『ヘタで恥ずかしいから』とかいう、自分(親)の【情動(感情)】から出た言葉は禁止令になりやすいんです。
早い話が、『いらいらしたから』とか『恥ずかしいから』とかの【自分(親)の為】の言葉が禁止令になるんです。
ところが、『危ないから』のように、【子供の為】に発した言葉は禁止令にならないんですね。

しかしよく考えないと、子供の為に言ってるつもりで、実は自分の為に言ってることが結構有るかもしれませんね…。
だいたい人間って、『貴方の為に言うんだけど』って言う時は、結構、実は自分の為に言ってる場合が多いですから。


ここで、大事な事を一つ。
これを読んでおられる男性(お父さん)へ。
ここに書いた文は、お母さんに向けて書かれているように思われる方が殆どだと思います。
また、実際問題として、子育てでメインの役割を担うのは、確かに『お母さん』です。
でも、子育ては【夫婦が共同し行うこと】であり、【お父さんとお母さんの共同責任】なんです。

だから、もしお母さんが子供に禁止令を言ったとしたら、その責任の半分はお父さんに有ります。
これだけは、胸にとめておいていただきたいのです。



ドライバー

ドライバーというのは、交流分析では『駆り立てるもの』という意味を表しています。
テイビー・ケイラー博士が発見しました。

これは下記のような5つがあり、子供の頃に親から躾けられた『メッセージ』と言われています。

1 完全であるように!
2 人に気に入られなさい!
3 一生懸命しなさい!
4 強くあれ!
5 急ぎなさい!


人生脚本を図にまとめると、このようになります。↓




ディスカウント
無意識の内に引き下げる、つまりケチをつけてしまうことで、交流分析では【値引き】とも言います。
ディスカウントの対象は、自分や他の人、出来事、可能性と多岐にわたります。





準拠枠
これは、認知心理学でよく使う【スキーマ(心の枠組み)】と考えるとわかりやすいかもしれません。

この【準拠枠】についてちょっとわかりやすい例を挙げますね。

このテーブルの上に【缶コーヒー】があるとします。
では、テーブルの面の高さから水平にこの缶コーヒーを見てください。
どういうふうに見えるでしょうか?

「縦長の長方形」と答える人が殆どですよね。
真上から見たら?

円形に見えますよね。

要は、そういうことです。
例えばAさんは長方形のモノとして捉えてるんだけど、Bさんは円形のモノとして認識しているんですね。

つまり、誰もが【自分の枠で認識し、判断している】ということです。
そして、それを【常識】として思っちゃっている場合も多いんです。

これを対人関係の例で考えてみましょう。
 
例えば小泉元首相について、どういうイメージがあるでしょう?

Aさんが持っている小泉さんスキーマは
『立役者。はっきりモノを言う。1人でも考えを実行する』
だとします。

でも、Bさんの持つ小泉さんスキーマは、
『ええカッコしぃ。トゲトゲしい。聞く耳を持たない』
かもしれませんね。

この『 』の中が、各人の持っている個人スキーマ、つまり個人に対しての準拠枠となります。
つまり、人は○○さんを、その人が持っている○○さんスキーマに基づいて見ているのです。

ところで他人の性格は、見る人のスキーマによって表現が違ってきます。
もう一度、上記の『小泉さんスキーマ』を見てください。
AさんとBさんは、実は同じ意味の事を、違う言い方でしているんです。
だから、大事なのは【モノの受け取り方(準拠枠)】なんですね。

『人生、いい事半分、悪い事半分』です。
【モノの受け取り方】によって、人生が明るくもなり、暗くもなりますもんね。

この準拠枠のことをスキーマと言いますが、中には鬱になりやすい、人にとってあまりよろしくない非合理的なスキーマもあります。
そこにツッコミを入れるのが【認知療法(論理療法)】なんですね。

交流分析で理解し、認知療法で良い方向へ向かって行く、というのがメンタルヘルスにおいて最適なのではないかと僕は思います。 その認知療法(論理療法)のビデオはこちらです。↓





また、子育てには交流分析も役立ちますが、具体的な心理学としては応用行動分析(ABA)がとても有効です。
応用行動分析(ABA)のビデオはこちらです。↓




ラケット、ラケット感情

ラケット感情とは狭義においては【ゲームの終わりに感じる不快な思い】、そして広義には【いろいろなストレス状況で経験される、なじみ深い感情であり、子供時代に学習され奨励されたもので、成人の問題解決の手段としては不適切なものである。(「TA TODAY」 イアン・スチュアート他著)】とされています。
簡単に言うと、【問題の何の解決にもならない、湧いてきた昔ながらのパターンの感情】となります。
そして、そこに至るまでのパターンをラケットというのですが、これだけではサッパリわかりませんよね。
では、例を挙げて考えてみましょう。

貴方は彼女(彼)とコンサートに行く約束をして、会場前で待ち合わせをしたとします。
ところが、仕事を終わって車で会場に向かう途中、高速道路が夕方の大渋滞…。
そんな時、貴方の心にはどんな『考え』が浮かびますか?

『しまった~、もっと早く出発すればよかった~』、と余裕を持って出てこなかった自分を責めます? それとも、『どうしてこんなに混むんだ』って前にいるドライバー達や、料金を取っている高速道路に対して怒りを覚えるとか…。
人によっていろいろありますよね。

ところで僕の知り合いで、高速道路で渋滞にはまると、携帯電話で旧道路公団に文句を言う人がいたんですよ。

「困った人ですね~。だって道路というモノには当然キャパ(容量)があるんだし、それを超えて車が入ってきたら渋滞するに決まってるじゃないですか。道路が自動車に合わせて急に広くなったり出来るワケ無いんだし、文句言ったところでしょうがないでしょ」

――そうなんですよね。
でもね、そう思えるのは、貴方が今【A(アダルト)】の自我状態にあるからなんです。
だけど、これが『その場面』にいると【A】が何処かへいっちゃうんですよね、人間って…。
例えば万博等のイベントで一番多かった苦情が、『人気パビリオンに入るのに、何時間も待たされた』、という事でもわかりますよね。

「そう言えばそうですね。もう出来上がってしまったパビリオンとしてはキャパ(容量)は決まってますもんね。
となると、行きたい人が沢山の場合は、待つか、待つのが嫌なら『入館者は皆、全速力で館内を駆け抜ける』かしないと無理ですよね」

――そうなんです。
ところが『その場面』では、ついつい自分の持っている『感情の出し方(パターン)』をやっちゃうんですよ。
自分を責めたり誰かに怒りを覚えたりしちゃう…、その場での何の解決にもならないのに。

これは、その人が子供時代に身に付けてしまったパターンがほとばしり出てしまうんです。
つまり、子供の頃『思ったようにいかなかい』時、『自分を責めたり』、『何かに怒りをぶつけたり』したらその後にいいことがある、と学習したのが大人になっても出てきちゃうんですね。

「じゃあ、ラケット感情が出た時は、それに気付いて上手く処理しないといけないって事ですね」

――ええ。
要は、『役に立たない』んですからね。

かまってほしいのなら、『どうしたら、かまってもらえるか』を真剣に考えたほうがいいんですよ。 それを、泣いたり怒ったりして『察してくれ』みたいな不満顔をしているから、『めんどくさいやっちゃな~』って返って鬱陶しがられちゃうんですよね。

「うわっ!わっかりやすい、どストレートな言い方…」


共生

「僕の彼女って、なんでも僕についてきてくれるんですよ。遊びに行くにも何か食べるのでも、ぜ~んぶ僕の言うとおり付き合ってくれるんです。僕がいなきゃ何もできなくって…」

――とても仲がよさそうですね。でも、【共生関係】にならないようにしてくださいね。

「【共生関係】って何ですか?」

――【P(親)】【A(大人)】【C(子供)】を使って言うとこうなっています。




こういう共生関係だとしたら、彼女は完成されていない【P】と【A】をあなたに補ってもらっている状態となっています。
また貴方も『そんなことは自分でやったら?』という自分の【C】を『値引き』しているとも言えます。
これらは『心地よい関係』かもしれませんが、やはり【お互いのアイデンティティを尊重する】関係へと発展していったほうが良いでしょうね。

ところで、これが男女逆のケースもあります。
そしてそれがひどくなると、妻に何でも全部やってもらうようになってしまい、そのうち奥さんに、『パパは1人では生きていけない人ね』などと言われる人間になっちゃうんですね。
さて、今回は恋人や夫婦間の例を挙げましたが、現実としては母親と子供の関係に、この【共生関係】はよく見られます。
ひとり立ちできない子供と、旅立ってほしくない親…。

でも、いつかは子供もアイデンティティを確立しなくてはなりません。笑顔で子供の自立を見守りたいですね。


また、アダルト・チルドレン(共依存)の問題も、この『共生』で考えてみると、気付くことが多いと思います。





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