心理から見た「般若心経」 その5 「六波羅蜜」の「布施」
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「六波羅蜜」の「布施」
「その4」では「五蘊」と「空」について述べましたが、今回は「六波羅蜜」についてです。
波羅蜜多(パーラミター)とは「彼岸(河の向こう側)」のことであって、「智慧の世界」と書きましたが、この悟りの世界に行く為には、6つの実践が必要となると仏教では教えています。
それは「六波羅蜜」と言い、下記の6つの行動となります。
1.布施(ふせ) 分け与えること
2.持戒(じかい) 戒律を守ること
3.忍辱(にんにく) 苦難に堪え忍ぶこと
4.精進(しょうじん) たゆまず努力すること
5.禅定(ぜんじょう) 精神を集中して心を安定させること
6.智慧(ちえ) 真理をみきわめること
この1番に位置する「布施」というのは、大智度論では「財施」「法施」「無畏施」の三種、それに加え雑宝蔵経では財物以外の布施として、「無財の七施」と呼ばれる布施があるのですが、その中でも下記の3つは本や説法で使われることも多いので、ご存じの方もいらっしゃると思います。
・眼施 好ましい眼差し
・和顔施 人が見ていて気持ちがよくなる笑顔
・言辞施 柔らかい言葉遣い
さて三種の布施の話に戻りますが、現代で布施というとお坊さんにお経を読んでもらって、その時に渡すお金のことを指す場合が多いのですが、あれが「財施」です。
「法施」とは、仏の教えを説くこととされる場合が多いのですが、もう少し広げて「知恵」を教えるということも含めてよいと思います。
日本人でもアジアやアフリカの発展途上国へ行って、ボランティアで現地の子どもたちに学問を教える人達がいるが、あれなんかは正に「法施」そのものではないでしょうか。
ちなみにお釈迦様は「財施」よりも「法施」の方が価値があると仰ったそうです。
また「無畏施」とは、例えば災難などに遭っている人の恐怖や不安を取り除いたり、安心を与えることですね。
今書いていてふと思ったのですが、筆者も子育てに役立つ応用行動分析とか、不安を減らす認知療法とかをホームページにUPしているということは、「法施」や「無畏施」をやっていることになるのかもしれないので、それはそれでパーラミターへ近づくという自分の為になっているのかも…(だとしたら、今まであんまりろくなことをして来なかったので、なんかちょっとうれしいですね)。
さて、布施の原語は「Dāna(ダーナ)」で、日本語の旦那(檀那=分け与える人)はここから来ています。
だから乞食は本当なら「右や左のダーナ様」と言わねばならないのですが、そんなことは置いといて…。
ここに日本語の問題というか、日本人が勘違いしやすい問題が潜んでいます。
「与える」というのは、なんか上から下への関係を想像させますよね。
でも布施というのは、自分がパーラミターへ行く為の行動なので、本来は
「自分がパーラミターへ行く為の修行なので、お金を分け与えさせてください」
という気持ちで行わなければならないのだそうです。
旦那とか言われて、喜んで偉そうにしている場合ではないんですね。
もちろん筆者は仏の境地を目標としてはいないので、そんな殊勝な心持ちを持つというような無理なことを思わなくてもよいワケですが、それでもこういうカウンセラーとかいう仕事をしていると、「与える」という言葉は(布施に限らず)やっぱりあまり使わない方がいいと思います。
それよりもシンプルに、布施は「プレゼント」と考えれば良いのではないて゜しょうか。
一言で言えば「喜んでもらってナンボ」であって、感謝やお礼を求めたり、尊敬を求めたりすると、その「感謝」や「尊敬」はプレゼントの対価となってしまい、そうするとプレゼントではなく「取引」になってしまうから怖いんです。
ところで少し話はそれるのですが、、筆者が尊敬している応用行動分析理論で著名なエドワード・デシ博士やリチャード・ライアン博士は、「ご褒美というものは、却ってモチベーションを低くする」と述べています。
もちろんご褒美がすべていけないという訳ではないのですが、筆者はこのデシ先生の言葉は「上から下への関係や行為」についての問題を提起されたのだと解釈しています。
(子育てなどにとても役立つ心理学「応用行動分析(ABA)」は、姉妹団体のNPO日本交流分析協会のホームページに詳しく書いてあります。興味のある方はご参照ください。https://npo-jisedai.org/aba.html)
心理から見た「布施」
ところで「布施」を心理学の観点から考えてみると…。 交流分析という理論では、誰でも心の中に5つのキャラクターを持っていると考えます。 それが下図1。





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