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心理から見た「般若心経」 その1

【「知識」と「知恵」】

このところ、筆者は心理学だけに留まらず、「安らぎ」もテーマにいろいろと考えているのですが、それに関連して日本人になじみの深い般若心経について少し書いてみようと思い立ちました。

もちろん筆者は仏教学においてはまったくの素人なので、内容の正確さとかは怪しいとは思うのですが、般若心経を心理的に考えてみたら、という感じで気軽に読んでもらえばと思います。

ではまず出だしから…。

仏説 摩訶般若波羅蜜多心経
ぶっせつ まかはんにゃはらみったしんぎょう

一般財団法人NHK財団のホームページ(https://www.nhk-fdn.or.jp/han/pdf/hannyashingyou.pdf)には、「偉大にして深妙なる智慧の実践行について、 その最も肝要なる教えを仏が説ける聖典」と訳されています。

ここでまず、日本語の有用さというか器用さを再認識してしまいます。

摩訶は「Maha」で偉大なという意味(ちなみにマハラジャは「偉大なる王」)となります。

そして般若はパーリ語で「paññā」(サンスクリット語では「Prajñā」)、智慧という意味。

波羅蜜多は「pāramitā」で、サンスクリット語で「彼岸に到るための修行」を意味します。

心は「hṛdaya」で、心臓とかエッセンス。

「経」は「sūtra」で経糸(たていと)。
ちなみに横糸は「Tantra」で、後期密教聖典の通称にもなっているそうです。

中島みゆきの歌、「糸」で言うと「スートラはあなた、タントラはわたし」となりますね。
ただ、この「経(sūtra)」は原文には無いようです。

さて、となると「摩訶般若波羅蜜多」は、Maha paññā pāramitā(マハー パンニャー パーラミター)という元の言葉を漢字で当て字したにすぎないんですよね。
暴走族とかが使う「夜露死苦」と似たような話です。

なぜか?

答えは「中国には「漢字」しかないから」。

だからカタカナにひらがな、そして漢字も使う日本語なら、無理して当て字にせず、「マハーパンニャーパーラミター心経」と表記することになります。

しかも般若心経には「呪(真言)」というのが入っているのですが、この真言というのは言葉の「音」に力があるという考え方なので、無理やり漢字の当て字にすると発音が変わってしまい、効果が薄れるのではないかと筆者は思うのですが、ここのところはどうなんでしょうね。

もっとも日本語は便利と言えば便利だけど、その分我々はものすごく多くの「字」を学ばされるはめとなります。
そりゃ外国人が日本語を使いこなすのには苦労するはずですね。
英語だとローマ字が26文字。大文字小文字合わせたって知れてますから。

ところで「pāramitā」は彼岸と訳されていますが、これは大きな河があって向こう側がお釈迦様が悟ったという「智慧の世界」。
こっち側は煩悩で苦しむ俗世。

つまり、その河を渡ってあっち側の「智慧の世界」に行くには、どうすればいいかが書いてあるお経ということですね。

さて「智慧」というのはお釈迦様レベルの話なのでこれはさておいて、我々レベルの「知恵」についてまず考えてみます。

「知恵」と「知識」はどう違うか?

これは講座では、下図のパワーポイント画面で説明しています。



つまり知識というのは過去から今現在迄の情報であって、知恵というのは「それを如何に活かすか」という能力のことであると…。

ちなみに念のため今回はAIやネットでも軽く調べてみました。
まずGoogle AIの回答。

「知識は知っていること、知恵はその知識を活かす能力を指します。」

そして「マイナビウーマン」は下記のように書かれていました。
--------------
「知識」とは何かを知って認識・理解することであり、「知っている事実」を表しているといえます。
「知恵」は、自分が持っている情報を元にどうすれば実践できるかといった、知識を発展させることを意味する言葉といえるでしょう。

(マイナビウーマン https://woman.mynavi.jp/article/240216-6/ より引用)
--------------------------

もっともこれには「知っている事実」とありますが、ここはちょっと注意する必要があります。

「知っている」ということは現在より前、つまり過去のこととなります。
だとしたら、その時点では事実ではあっても、それが確かとは言えません(例えば昔は太陽は地球の周りを回っているのが「事実」だったが、今では「事実」ではない)。

そしてAIも「マイナビウーマン」も、このもっとも重要である「過去」と「未来」ということについて触れていません。
でも図で示したように、大事なのは「未来」なんですよね。

ここでもう少し「知識」について例を挙げてみます。

先日内閣府が、東南海地震における死者は最悪で29万8000人にのぼると発表しました。

これは「知識」となります。

そして、これで深刻に落ち込んで、やる気を失ってしまったとしたら、その人は「知識で終わっている人」。

「で、実際どれくらい怖がればいいの?」
これが知恵のスタートとなります。

内閣府によると、その想定された死者の内訳は、
・津波によるもの 21万5000人
・建物倒壊によるもの 7万3000人
・地震火災によるもの 9000人
となっています。

津波が来るエリアの人はもちろん対応を考えておく必要がありますが、津波が来る確率がひじ用に低いエリアの人は、その29万8000人という数字だけ見て落ち込んでいてもしょうがないんですね。

津波で死なないとしたら、取り敢えずは建物倒壊と地震火災の合計の8万2000人について考えればよいワケです。

ちなみに筆者が住んでいる愛知県の死者予測は19000人だが、おおざっぱな計算で死者全体から建物倒壊と地震火災で死ぬ人の割合(27.5%)を掛けると5225人となる。

そして愛知県と一口に言ったって、震度の大きさはいろいろです。
これも図がNHKなどで発表されているのでそれを見ると
・震度7 三河地方の海岸に近いところ。
・震度6強は西三河の平野部と名古屋市を含む尾張地方の大半
・震度6弱は三河地方山間部
となっています。


(出典 内閣府のデータを基にしたNHK作成画像)

ここで建物倒壊の心配をするには、耐震についても知らないと話になりません。

そこで調べてみると、愛知県の 2018(平成 30)年時点での住宅(戸建て住宅、長屋、共同住宅)の耐震化の状況は、居住世帯のある住宅総数約 306.9 万戸に対し、約 275.2 万戸が耐震性があると推計され、その耐震化率は約 90%となっています。
逆に言うと耐震性が不十分と判断される住宅は約 27.3万戸存在しているということですね。(愛知県建築局のデータより)

その耐震性が不十分と判断される住宅が、仮に1世帯3人とすると約80万人。

建物倒壊による死者は全国で7万3000人なので、建物倒壊による死者率を愛知県の予測死者数に掛けてみると4560人。

となると耐震性が不十分な家屋の住人は80万人なので、建物倒壊による死者は4560人。



もちろんものすごくおおざっぱで、或る意味いい加減な計算で出した数字なのですが、ただ大事なのは「約30万人が死ぬという『知識』だけ頭に入れて、落ち込んで不安を抱えて暮らす」という人にとっては、この考え方は随分メンタルヘルスの改善に役に立つということなのです(これが認知療法のスケーリングという考え方です)。

この数字を引っ張り出して、それで何をどうするのか考え行動するのが「知恵」。


ちなみに、ここに書いた数字はスマホですぐ手に入ります。
すなわち昔と違って、知識は頭に入らなくても、かなりの部分はスマホで手に入る時代となったワケです。

しかし、ここでちょっと考えなければならないのは、例えば高校入試や大学入試は「何」を計っているのだろうか、ということです。

多少は以前と変わったというものの、相変わらずスマホで簡単に手に入る「知識」を、頭の中に入れているかどうかだけで試験をやっているのではないでしょうか?

そう言えば先日の日経新聞に、AIに東大理Ⅲ(医学部に進む学生が多い科)の入試をさせたら合格だったと載っていました。

つまりそれは、東大理Ⅲの入試はパソコン持参なら誰でも解ける試験だということに他ならないのです。

…続きは後日「般若心経 その2」で。


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