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「六波羅蜜」の「忍辱」


「その6」では「六波羅蜜」の「持戒」と【CP】について述べましたが、今回はいよいよ「忍辱(にんにく)」についてです。

ダライ・ラマは、「持戒」を行う為には「忍辱」が必要であると述べています。

忍辱とは「耐え忍ぶ」という意味合いですが、ここではシンプルに「辛抱」として考えてみることにしましょう。

となると、心理から見るとまずは交流分析の自我状態では「良い子」の役割としてお馴染みの【AC】が、「辛抱」というイメージに近いと思われるので、まずはそこから踏み込んでみます。
(自我状態はNPO日本次世代育成支援協会ホームページ参照⇒ https://npo-jisedai.org/ego.html

前に書いた自我状態の図(参照 https://ameblo.jp/belcosmo/entry-12904478943.html)のように、「良い子」で例えられる【AC】というのは、【CP】つまり「持戒」の矛先(ベクトルの対象)となる場合が多いんですね。

【AC】の機能としては、前に書いたように
・従順
・依存
・我慢
・抑圧
というようなものが挙げられます。

これにより「良い子」となる代わりに、自分の欲求(【FC】)を抑圧してしまうので、裏面には「反抗」や「怒り」のエネルギーが潜んでいるということになるワケです。

ここで注意が必要なのは、「良い子(良い人)」だから「大人しい」というイメージを抱いて、協調的で良く出来た人間のイメージを抱く人もいるのですが、「良い子」と言う以上、要は子どもなんですよね。

子どもというのは基本は「欲求」で成り立っているというのを忘れてはいけません。

じゃあ【AC】の欲求というのは何か?
これを筆者は「見捨てられ不安」と講義では言っていました。

「見捨てられ不安」とパーソナリテイ障害



さて、「見捨てられたくない」というのも、これはこれで強烈な欲求なのです。
だからこそ「辛抱」して「ワガママな欲求(【FC】)を抑え込んで、良い子や良い人を演じるということなんですね。

ところでここで話は少し脱線しますが、この見捨てられ不安がなぜ強烈な欲求なのかということについて、ちょっと触れてみます。

まずは生物学的な話から。

「人」という生物はタイプとしては馬や牛と同じく、本来は産まれたらすぐに立って活動する動物んですね。

ところが実際は、幼児は産まれて10カ月くらいは、寝たきりの生活をしています。

なぜ?

人間は他の動物より脳が発達した為、頭がかなり大きくなったのですが、直立二足歩行をするようになったこともあり骨盤幅と産道が狭いので、本来の出産時期にはその大きな頭が産道を通れません。

だからその狭さをぎりぎり通れるタイミングで、早産をせざるを得ないわけです(これを生理的早産と言っています)。

つまり本来の丁度よい出産時期より、約1年ほど早産なんですね。
だから生まれてすぐ立つどころか、1年の間は親の世話が無いと何ともならない状態で過ごさなくてはいけないのです。

自分だけで動けもしない、そういう不安な状態で、見捨てられ不安を感じない幼児はいないでしょう。

だから、幼児期に親との関係が上手くいかなかった場合(虐待ネグレクト等)は、この見捨てられ不安が原因で下記のような性格パターンになってしまうこともあります。



ちなみに幼児期に親との関係が上手くいかなかった場合、脳の成長に悪い影響を及ぼすことはいろいろな研究で明らかになっており、ネグレクトにより海馬の発達が阻害されるという怖い研究報告もあります。

筆者のところにカウンセリングに来られる人の中には、中学校くらいまでの記憶が殆ど無いという方も何人かおられたが、殆どの場合で親子関係に問題がありました。
海馬とかの問題もあるのかもしれませんね。

なお福井大学では、愛着障害から発達障碍問題が生ずるリスクを詳しく研究しています。

さて上記の図の各項目が、所謂パーソナリテイ障害の問題点なのですが、パーソナリテイ障害までいくと逆に「辛抱」は出来ない(逆にすぐキレる)タイプとなる場合が多いようです。

「辛抱」とアダルト・チルドレン


では「辛抱」しすぎで苦しむのは、というとこれがアダルト・チルドレン

アダルト・チルドレンとは子ども時代に機能不全家庭で育った為、大人になっても心の奥深くにトラウマを持ち続けている人のことだが、但しこれは医学的に認められた病名ではありません。

特徴としては
・自信が無い
・要求や希望を表現することが、なかなかできない
・他の人の夢や目標の達成を、自分の夢や目標にする
・察してくれることを切望する
・低い自己評価
・他者との境界線が脆弱(図々しい人に押し込まれる)
・自分の希望を後回しにする
・嫌われないことを第一に考える
・過剰に察する
・へりくだるため、人に舐められやすい
・読みが甘い(無意識の期待)
となります。

「辛抱する」と「辛抱させられる」の違い


さて、見捨てられ不安についてはこれくらいにして、ここで「辛抱」に話を戻します。

人間関係の悩みの中で大きなウェイトを占めるのは、実はこの「辛抱」なのですが、ここで考えなければいけないのが
・辛抱する
・辛抱させられる
の違いです。

「布施」「持戒」と同様、「忍辱」も自分がパーラミター(お釈迦様の境地)にたどり着くために、つまり【自分の為に】するものなのであって、そこを忘れてはいけません。

カウンセリングに来られる人は、ここのところを突っ込んで考えていないケースが多いのです。

だから「なんの為に辛抱しているんですか?」と聞くと、「え?」という反応となってしまうケースがよくあります。

別にパーラミターに達するためにじゃなくてもいいけど、「自分が〇〇となる為に」とか「自分が〇〇を得る為に」というゴール設定が出来ていないわけですね。

家族療法や短期療法で使われることもある解決志向アプローチ(SFA)では、この『ゴール設定』をとても重要視します。
これは確かにその通りで、例えば「石の上にも3年」というのは「辛くても我慢強く耐えていれば、いつかは必ず成功する」という意味であって、「成功」というゴール設定があればこその話です。

辛抱の代名詞である「臥薪嘗胆」という言葉も、その昔中国の呉王の闔呂が越王の勾践に敗れて戦死した後、闔呂の息子夫差が、父の仇を討つために毎日固い薪の上に寝、苦い肝をなめ、その辛さで復讐の志を忘れないようにして3年後に勾践を降伏させたことが由来です。

ゴール設定をせずに辛抱するっていうのは、「何のために?」も無しに石の上に3年も座って、「で、どうなの?」と聞いたら「冷たかった~」とか、「薪の上に寝ててどうなの?」と聞いたら「痛かった~」とか言っているようなものです。

…という話をカウンセリングで言うと、泣いてしまわれるクライアントもおられるのですが(クライアントを泣かせてどうするんだという気もしますが)、共感も大事だが共感だけで同じところをぐるぐると回っていてもしょうがない場合もあるんですよね。

やはり、せっかく「忍辱」の能力があるのだから、自分の未来をHAPPYにする為にその能力を使ってほしいのです。

そしてそれには、まずゴール設定が要るのです。

というところで、続きは「その8」へ。


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